幅広い視野でデジタル化を進める
生活者の視点にビジネスのヒントあり

 デジタルトランスフォーメーションの文脈でIoT活用を進めるには、エコシステムが基本になります。自社(企業)があって、モノ(製品・サービス)があって、顧客がいて、パートナー(取引先)がいる。これら四者全体を視野に入れた、新しいITのプラットフォームをつくることが重要です(下図参照)。自社のIT化、IoT化は、今現在の最適化にすぎません。デジタルビジネスで考えていくべきことは、顧客の環境もデジタル化するなかで、継続的な関係構築を図るには、パートナーも含めたプラットフォームが必要であり、ここにIoTを活用するということです。

IoTの本質は現場の最適化ではない 次世代の自社の在り方が問われている出典:ガートナー ジャパン

 視野を広げていくには、四者全体をスコープに入れた新しい視点を持ったチームが必要ですし、少なくとも経営トップは全体を見て、リーダーシップを発揮していかないといけません。もちろん、それは簡単なことではありません。試行錯誤を繰り返すなかで生まれてくるものかもしれません。

 IoT活用は製造業や医療・介護の分野で大きな変化をもたらすと答えてきましたが、今後は金融とテクノロジーが融合したフィンテック、IT化が最も立ち遅れていた農業においても可能性を広げていきそうです。

 世のなかには、衣・食・住などの生活の基本をはじめ環境や少子高齢化、格差、政治・経済など構造的、組織的な問題が散見されます。いち生活者の視点に立てば、いろいろな不満や問題が見えてきます。しかし、いち企業に入ると、次の製品開発が見えないといった閉塞感があります。自社は何ができるのか、製品・サービスを通じて本当に世のなかの役に立つことができるのか、これまで常識や慣習として受け入れてきた制度やルールを問い質す姿勢もIoTがもたらすインパクトを捉える大きなヒントになり、テクノロジーを活用した新たなビジネスが見つかるかもしれません。

 IoTは少なくとも、1年、2年の短期間で勝負がつく話ではありません。5年、10年あるいはそれ以上かかるかもしれないトレンドの変化です。焦ることは決してありませんが、それでも始めている人はもう始めています。まずは大きな課題に対する取り組みを少しずつ進め、これから構築される新たな時代のフォロワーになりたくなければ、冷静かつ大胆に進めていただきたい。最後に、デジタル化、IoT化を進める7ヵ条を読者のみなさんに送ります。

IoTの本質は現場の最適化ではない 次世代の自社の在り方が問われている出典:ガートナー ジャパン

(構成/堀田栄治)