渡辺 厚氏
情報伝達研究所 代表取締役 立教大学観光学部 兼任講師
1951年生まれ。90年に情報伝達研究所を設立し、全国のMICE都市、施設のコンサルティングを手がける。「VISIT JAPAN大使」も務め、「観光政策、観光研究におけるMICEの位置づけと課題」(2011年3月)などMICEに関する論文多数。

 MICEの経済波及効果は、一般の観光に比べると数倍大きい。このことを証明するデータもある。

  JNTOや神戸市の経済波及効果調査でそれぞれ監修を務める渡辺厚氏によると、MICEの参加者1人当たりの経済効果は、一般の観光の7倍あるという。

「神戸国際観光コンベンション協会が09年に調査した結果(注1)ですが、それによるとコンベンション参加者数は、観光客全体の4.2%にすぎなかったが、生産誘発額は観光産業全体の30%あった。つまり1人当たり7倍の経済効果があることがわかったのです」(渡辺氏)

 1人当たりの経済効果が大きいのは、参加者の滞在日数が一般の観光に比べて長く、しかも公費が使えるため、消費額が増える傾向にあるからだ。

東條秀彦氏
MPI Japan Chapter 会長、観光庁MICE推進検討委員会委員
1957年生まれ。旅行会社勤務を経て、91年よりちば国際コンベンションビューローに勤務。99年~2000年、日本政府観光局へ出向し、国際会議のマーケティングおよびセールスを担当。08年から韓国MICE産業協会諮問委員などを務め、11年7月より現職

  さらに消費支出に加えて主催者や出展者の支出も大きく、コンベンションの関連産業をはじめ都市全体での関連支出も大きくなる。また神戸市の場合、同年度の雇用創出効果が1500人弱あり、これは市内就業者人数の約2%に当たるという。

 世界のMIICE産業に詳しい、MPI日本事務局会長の東條秀彦氏は、「MICEの先進国である米国では、MICE産業は全米の製薬産業にほぼ匹敵する規模だと言われている」と説明する。

「経済活動を活発化し、地域社会に恩恵を与えるMICEは、もはや“都市(地域)活性化のために必要な装置”であると考えるべきなのです」
  

「開催地ならではのおもてなし」が
成功の条件

 国際会議協会(ICCA)の統計によると、2010年の国際会議の開催状況で日本は前年から順位を上げ、世界第7位となった。とはいえ都市別では、国内最多の東京が68件で世界第27位、アジアではシンガポール、台北、北京、ソウル、香港、上海、クアラルンプールに続く第8位という状況である。ここ数年、中国、韓国での件数が大幅に増加しているなかではやや、遅れをとっているのが現状だ。

「首都圏には東京国際フォーラム、パシフィコ横浜、幕張メッセなどの施設があるが、宿泊施設が分散するなど使い勝手が悪い面があり、大規模なMICE開催に対応できないケースがあるのです」と東條氏は指摘する。実際に大規模なインセンティブ・ツアーの誘致に当たり、会場の都合がつかないため海外の開催地に譲ったケースもあるという。

(注1)神戸国際観光コンベンション協会のデータは、同コンベンション事業部長・林芳宏氏の論文「神戸のMICE都市戦略」(「観光研究Vol.22」)を参照した