Case
地域資源の活用と創意工夫で
地方都市での国際会議開催を成功させる

 国際会議は大都市ばかりではない、工夫を重ねれば地方都市での開催も成功する。地方でのMICE開催は、観光振興に新しい視点をもたらし地域の活性化にも繋がる。

 2010年8月18日から3日間、山形県上山市の“かみのやま温泉”月岡ホテルで、「計算機と情報科学に関する国際会議ICIS2010」が開催された。参加者は約200人で、半数近くがアジアや欧米からの外国人。実行委員長を務めた山形大学大学院准教授の松尾徳朗氏は、「大都市での開催に飽きている参加者が多く、科学技術分野の国際会議では前例のない地方の温泉旅館への誘致に逆にチャンスがあると考えた」と説明する。

■国際会議を温泉旅館で開催して成功 

国際会議レセプションでは、旅館女将からのウェルカムスピーチも

 旅館の和室や温泉は好評で、外国人参加者からは「温泉、浴衣という体験により日本に来ていることが実感できた」「仲居さんをはじめ、人々が驚くほど親切なのが印象的だった」「大都市を離れ地域の多様性を感じることができてよかった」などの声が聞かれたという。

 受け入れに際しては、現地までのアクセスを画像付きで詳しくHPで説明したり、多様な食生活を考慮してビュッフェスタイルの食事を用意、また時差を考えてチェックイン時にあらかじめ布団を準備するなど、きめ細かな配慮を行った。地元のコンベンション・ビューローも会場内に観光案内デスクを設置、英語対応のガイドを手配した。

「かみのやま温泉では1度に来た外国人観光客の数としては最高で、観光振興の新しい視点が発掘され、地域活性化の機運が高まったと聞いている。地域資源をフル活用し、自治体やコンベンション・ビューローに協力してもらえれば、地方の温泉でも十分に国際会議が開催可能、今後はこのようなかたちの国際会議が増えてほしい」と松尾氏は語る。

■震災復興地、仙台で国際会議を開催

 今年10月30日から4日間、宮城県の仙台国際センターでは「微小光学国際会議(MOC)」が開催された。同センターでは震災で天井の一部が落ちるなどの被害があったが、復旧後の初の国際会議となった。MOCは参加者200~300人規模の会議で、偶数年は海外、奇数年は日本で開催するのが慣例となっており、北日本では初の開催となった。

早稲田大学理工学術院
中島啓幾教授

 実行委員長(注2)の早稲田大学理工学術院の中島啓幾教授は、「震災直後は中止や開催場所の変更も考えたが、こういう時期だからこそ開催する意義があると考え、論文の締め切りを延ばすなどして、なんとか開催にこぎ着けた」と語る。運営は業者に丸投げせず、応用物理学会内の研究グループのスタッフ等が手弁当で行っている。会議中には復興支援の室内楽チャリティコンサートを開催、地元の人びとも演奏を楽しんだ。

震災の復旧後、初の国際会議となった第17回「微小光学国際会議」。天井の一部が落ちる被害があったパーティ会場

「パーティでは地元の物産やお酒を出すなどできるだけ地方色を出し、海外からの参加者にも好評だった。この時期、仙台で国際会議を開催したこと自体、日本の復興をアピールできたと思う。地方での国際会議の開催は、助成金というインセンティブもあり参加費主体で会議を運営できる利点もある。首都圏での開催と比べてセッションの集中度も高く、運営のノウハウがしっかりしていれば地方で国際会議をやる意義は大きい」と中島教授は語る。

(注2)MOC運営に第1回から携わってきた微小光学研究グループの実行委員長

 

■東日本大震災からの復興を目指して
「第21回国際ミーティング・エキスポ」が開催

 12月14日(水)、15日(木)、東京国際フォーラムで「第21回国際ミーティング・エキスポ」が開催される。MICEに関する情報が一堂に集まるこの エキスポには、コンベンション都市や推進機構、政府観光局をはじめとして、コンベンション施設、ホテル、旅行会社、会議・展示会・イベント運営会社が出展する。

 14日は開催時間が13時30分~20時と変更され、日中忙しい人も参加しやすいスケジュールに。セミナーやコンベンションの誘致・開催に関する相談コーナーも開設され、役立つ情報が満載だ。

http://www.jccb.or.jp/ime2011/