経営者マインドは
「人を大切にする」ことにシフトしている

 坂本教授は、企業調査や講演のため国内外を飛び回る日々を送っている。そこで語るのは「人を大切にする経営学」である。数年前までそうした内容を話すと、けげんな顔をする参加者や、途中で席を立つ人がいた。ところが近年は、様相が変わってきたという。

「人を大切にする経営」を否定せず、「どこから手を付ければいいのか」「どうすればそういう経営ができるか」という質問が増えてきたのだ。

「リーマンショックと東日本大震災以降、“人を大切にする経営”を志向する企業が大幅に増加していると実感しています。これは国内だけでなく、アジアの企業でも同じ。先日訪れた台湾の成長企業は、外食産業でありながら離職率は実質ゼロ、月間超過労働時間はわずか0.5時間で、社員の教育訓練時間は所定内労働時間の10%という、まさに“人を大切にする経営”を実践する企業でした。文化の違いなどはなく、今世界の企業に必要なのは“人を大切にする経営”そのものだと思います」と、坂本教授は締めくくる。

 息子・娘を入れたい「いい会社」を見極めるポイントは、恐らくそこにある。