M&Aによって急成長する日本企業も増えているが、買収によって獲得した人材の能力を適正に評価し、適材適所で活用できなければ、各人のキャリアアップの実現と企業の成長は期待できないだろう。足りないスキルを効率よく身につけられる教育システムの構築が人材活用のカギを握る。グローバル人材や新しい価値観を持つミレニアル世代への対応も必須となっており疎かにできない。M&A戦略により急成長を遂げてきた総合人材サービスの株式会社アウトソーシング(以下、アウトソーシング)も、そうした課題を持つ企業の1つだ。同社は人材活用に関してどのような課題を抱えていたのか、またどんなソリューションを講じたのか、取材した。

キャリアパスが見えない派遣社員たち

社員が能動的に学習できる環境を構築し企業の更なる成長を実現する眞鍋謹志氏
アウトソーシング 経営管理本部総務部部長
グループCSV推進

 工場の製造ラインへの人材派遣からスタートしたアウトソーシングは、M&A戦略のもとメーカーの設計・開発分野やIT分野、管理委託事業などに対象業種を広げ、グローバルに急成長を遂げてきた。2013年には東証1部に上場。現在、100社ほどのグループ企業を抱え、16ヵ国に事業を展開し、2017年12月期の連結売上高は2100億円を超える見通しだ。

 さらに、2020年までに4410億円の売上収益を目指し、コンビニエンスストアへの人材派遣や外国人技能実習生のサポートなどにも進出している。

 こうした中、人材派遣業界の構造的な問題もあり、同社では人材活用や育成、人事に関する課題に直面していた。まず、技術職の派遣社員(以下、社員)には次のような不安や戸惑いがあるという。

「現在の業務はいつまで続けられるのか、いつまで続けるのか、自分の技術はいまのままで大丈夫なのか、求められなくなる日が来るのではないかという不安、そしてキャリアアップに向けて自分に何が足りないのか、どんなことを学べばいいのか、企業としてキャリアパスを支援できているのか、という多くの課題を感じる状況でした」(眞鍋氏)

 現場マネジャーの「こういった人材がほしい」という要望に素早く応えたいという課題もあった。例えば、現場で評価の高い人材を管理職に引き上げると、その抜けた穴をすぐに埋められず、現場がスムーズに回らなくなったりする。どんな教育を受け、どんな職歴があり、どのような業務を担当してきたか、海外に赴任できるかどうかといった現在の人事データベースが同社の拡大スピードに合わなくなってきていることが原因だ。

 一方、社員には技術職ばかりでなく、営業所長やマネジャーなど高いコミュニケーションスキルが要求される職域の人も多い。労務管理の仕事を任されている人もいる。こうした管理職を目指すための教育もより多様化したものが必要。ただ、なかには管理職や正社員化を望まない人もいて、6万人を超える社員の管理は容易ではない。