実際、アウトソーシングのようにM&Aによって急成長してきた企業には、社員の能力・スキル管理が追いついていないところが多いようだ。社員の能力を把握できないからどんなスキルが不足しているのかわからない、だから教育も行き届かないという悪循環に陥っている。また、グループ企業が異なる指標で社員を評価しているケースも少なくない。これではグローバルな適材適所の人材配置は望めないだろう。

 効果的な教育があってこそ、社員の能力・スキル管理はできる。つまり、両者は表裏一体ということだ。

これからAI化が急速に進むと教育も変わる

 眞鍋氏は、社員が自らの能力やスキルを売り込めるように、コーナーストーンとマイクロソフトの「Office 365」を連動させ、職務経歴書が出力できるようにしたいともいう。さらに、教育と人材登録のシステムをグループ内だけでなく、一般に公開することも考えている。

「もちろん、自社グループで働いてくれればありがたいですが、スキルを生かして他の職場で活躍することも選択肢に入るような働き方ができる社会になればいい。今後、AI化が急速に進み、人が携わる業務が大きく変わることで、今までとは違った教育も必要になるはずです。一方で、日本の人口減少は進み、確実に生産性は落ち込むでしょう。だからこそ、グループ企業の社員にこだわらず、日本で働く人の基礎的な学力、働くための能力を引き上げるシステムを創出したいというのが私たちの最終的な目標です」(眞鍋氏)

相手を「理解すること」から教育は始まる

 アウトソーシンググループの特例子会社である「株式会社アウトソーシングビジネスサービス」の社長も兼務している眞鍋氏。そこでの経験から教育とは何かについて学ぶことも多いらしい。

「一般職も管理職も障がいを持つ『チャレンジド』であり、それぞれの特性は異なるわけですが、みんな自立しています。彼らへの業務の教育を通して感じたのは、『理解してあげること』が何よりも大切ということでした。相手をよく理解し、適材適所に配置し、能力を引き出すことが会社の役割。あとは本人のやる気次第です。当たり前のことなのに、しっかりとできている企業は少ないのではないでしょうか。この課題は、一般的な企業と変わりありません」(眞鍋氏)

 すべての人が部長を目指す必要はない。目標は人それぞれ。だからこそ、理解がない教育は意味がない。価値観が多様化する時代だからなおのこと、一人ひとりの目標に応じたキャリアパスが求められている。