銀行をはじめとする既存金融機関の位置付けが大きく変わりつつある。お金を運用するにしても、決済するにしても、融資を受けるにしても、その手段は多様化し続けている。もはや個人にとって銀行はお金の中心ではなくなってきているという見方もある。この状況の中で既存金融機関は個人向けのサービスの強化にどのように取り組んでいくべきなのだろうか。

Fintech拡大の中で
金融機関が生き残るカギは?

 個人にとって、銀行をはじめとする既存金融機関の存在感が確実に薄れつつある。それは、以前であれば銀行で行うのが当然だった公共料金などの振り込みに、クレジットカードやコンビニ決済が利用されるようになったことからも明らかだろう。

 さらに、ITを駆使して新たなサービスを提供するFintechの台頭が追い討ちをかけている。個人は利便性を求めてFintechが提供する革新的なサービスにシフトし、既存金融機関との接点はますます減っていく。ネット企業などの有力企業による金融サービスへの参入も始まっている。

 こうした中で既存金融機関は今後どう対応していくべきなのだろうか。打開策につながるカギは、個人の全体像を正しく把握することである。銀行を例に考えてみよう。膨大な個人口座を持つ銀行だが、個人の特性がわかるような情報は意外に少ない。あるのは口座情報と預金額のデータだけだ。これではビジネスは広がりづらい。

Fintechを味方につけるには?金融機関が個人との関係を強化するためにNTTコミュニケーションズ
アプリケーション&コンテンツサービス部
アプリケーションサービス部門
部門長
中野 誠氏

 まず必要なのが、個人資産情報全般へのアプローチだ。そのためには、他行の預金状況を知る必要もあるし、個人の人生の目標やライフプランを理解する必要もある。NTTコミュニケーションズの中野誠氏は「いつ何のためにお金を使うのか、預金以外の資産は何があるのか、といった個人の全体像を正しく知るための情報が、銀行はなかなか把握できていません。これではさまざまなライフイベントを支援する重要なパートナーとしては不十分ではないでしょうか」と語る。

 しかし、現実問題として、個々人と接点を持つのは難しい。情報の提供を促しても、簡単には教えてもらえない。そもそも銀行との接点自体が減ってきているのだ。だからこそ便利なサービスを提供して、個人の目を銀行に向けさせる工夫が重要になる。

 そこで注目されているのが、Fintechのサービスだ。銀行自ら個人向けに使いやすいアプリケーションを提供することで、親近感を持ってもらうことが、個人との関係性を強化し、ひいては個人の全体像の把握につながっていく。

10年以上の実績を持つ
アグリゲーション基盤

 どのようなアプリケーションを提供すれば個人の顧客に喜ばれるのだろうか。NTTコミュニケーションズではこれまで「お客さまの大切な情報を預かる」という観点から、メールやストレージサービスを提供しており、数百億円規模の売り上げへと成長させてきた。そして今着目している有力なサービスが“PFM(Personal Financial Management:個人資産管理)”であるという。家計簿ソフト自体はすでに多くのベンダーから提供されている。しかし、現在提供されている家計簿ソフトは、銀行の口座情報の参照など、できることは限られている。銀行自体が自行のスマホアプリの拡張機能として便利なPFMサービスを提供できれば、シェアを獲得できる可能性は高い。