労働市場は絶好調
トランプ効果で設備投資余力も大

 次に「労働市場」です。労働市場の需給不均衡は、失業者数(労働供給)に対して、企業の求人数(労働需要)がどの程度あるのかで判断できます。これを測る指標に、「労働需給ミスマッチ指数」があります。これは業種ごとの失業者数と求人数との乖離の度合いを統合し、指数化したもので、指数が上昇するほど労働市場の需給不均衡が拡大していることを意味します。

 求人数の統計がさかのぼれる01年以降では、労働需給ミスマッチ指数が上昇に転じると(つまり需給不均衡が拡がり始めると)、間もなく米景気は後退に陥っています。同指数は前回、景気後退局面が終了した直後の09年4月に0.32のピークを付けた後に低下に転じ、最近では0.16前後と、01年以降では最も低い水準で推移しています。ミスマッチ指数から判断する限り、米国の労働需給に不均衡は見られません。

 最後は「金融市場」です。金融市場の不均衡を測る尺度としては、「ファイナンシングギャップ(資金差額)」があります。これは、設備投資に在庫投資を加えた固定投資から、税引後利益に減価償却費などを加えたキャッシュフローを引いたものです。この指標を見れば、企業が設備投資や在庫投資をどの程度、内部資金で賄っているかを測ることができます。

 企業が景気の先行きに対して強気になり、過剰な投資を行うようになる、つまりファイナンシングギャップが拡大すると、前述の財市場の在庫過多と同じく、需給バランスがぐらついて設備の過剰供給になり、一気に景気後退に陥る可能性が高まります。米国では60年以降、ファイナンシングギャップが対GDP比率で+1.81%(60年以降の平均値+同1標準偏差)を超えてくると、ほぼ例外なく景気後退に陥っています。

 直近17年10~12月期のファイナンシングギャップを見ると、対GDP比で-0.6%でした。なぜマイナスかというと、設備投資は増えていますが、トランプ大統領の税制改革によって設備投資の一括償却が17年10~12月期にさかのぼって認められたため、減価償却費が急増し、キャッシュフローも大幅に拡大したためです。このように、ファイナンシングギャップは、米国企業の設備投資余力が極めて大きいことを物語っています。

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短期金利が長期金利を上回る“逆イールド”は程遠い

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