FRB今年のFRBが行う利上げの行方は? Photo:PIXTA

 皆さん、こんにちは。三井住友アセットマネジメント調査部です。毎週土曜日に「ビジネスマン注目!来週の経済、ここがポイント」をお届けしています。

 2018年の米国経済の焦点は、インフレ加速の有無でした。しかし、インフレの加速は不発に終わり、このことが2019年の景気や金融政策を見通すうえでの焦点となります。インフレを伴う前向きな景気拡大が生じなかったということは、トランプ大統領による景気刺激策の効果が一時的なものにとどまることを意味するからです。そうであれば今後の景気の方向は政策効果の剥落とともに下向きになるということになります。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)も、インフレ懸念の後退により、中立金利を上回る利上げに対して徐々に消極的になりつつあります。

景気は下降局面入りだが、
米国経済が失速する可能性は低い

 2019年の米国経済は、下降局面に入る見通しです。ひとつには、労働力の天井に突き当たるためです。FRBが公表するベージュブック(地区連銀経済報告)では、人手不足による雇用の増勢鈍化が報告されています。失業率が直近の1月で3.9%と過去最低水準にあること、しかも高齢化が着実に進行しつつあることを踏まえると、無理からぬことといえるでしょう。

 しかも、海外経済の見通しも、芳しくありません。世界景気に及ぼす影響の大きい中国は、景気刺激策の発動で失速は回避されるものの、過剰債務等の構造問題が重くのしかかるため、景気の拡大を加速させるには至らないと見られます。欧州の景気は、外需頼みであるうえ、英国の欧州連合(EU)離脱問題を抱えています。新興国経済も、米中経済の減速が予想されるなか、グローバル景気を牽引するほどの力はないでしょう。

 もっとも、米国経済が失速する可能性は低いと考えられます。在庫や生産設備等のストックに過剰な積み上がりが見られない、つまり資本ストックや労働力に対する調整圧力が高まっていないからです。ニューヨーク地区連銀が公表している景気後退確率を見ても、徐々に上昇してきてはいますが、それでも2018年12月時点で21.4%に過ぎません(景気後退確率とは、12ヵ月先に景気後退に陥る確率を示します)。過去を振り返ると、この数値が30%を超えてこない限り、景気後退に陥ることは、まずありません。