短期金利が長期金利を上回る
“逆イールド”は程遠い

 3つの市場の指標のほか、「長短金利差」も、米国経済の拡大がしばらく続くことを示唆しています。通常、長期金利の水準は、先行きの景気拡大に伴うインフレ上昇や、利上げなどの“期待”を織り込むことから、短期金利のそれを上回っています。ところが、景気の拡大が続き、金融引き締め局面に入ると、短期金利がより速く上昇するため、長短の金利差は縮小します。

 これがさらに進むと、短期金利が長期金利を上回るようになります。いわゆる“逆イールド”の状態です。過去の例では、逆イールドになると、景気後退に陥りました。しかし、足元の長期金利は短期金利を上回っています。10年国債と1年国債で比較すると、足元の米10年国債利回りは2.8%強、同じく1年国債利回りは2.1%弱ですので、逆イールドになる、つまり長短金利が逆転するまで、まだ0.8ポイント近くの余裕があります。

財政政策は拡張的
利上げのスピードも緩やか

 しかも、財政政策は拡張的です。トランプ大統領は、大統領就任初日に、「10年間で2500万人の雇用を創出、4%成長の実現」を発表しました。この公約を実現するため、公共投資の拡大など、拡張的な財政政策を提唱しています。

 議会も、今年2月に総額3000億ドルの歳出上限の引き上げを認めました。今後、議会で歳出法案が成立し、財政支出が拡大すれば、18年、19年のGDPをそれぞれ0.2ポイント、0.3ポイント程度押し上げると予想されます。

 一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融政策緩和の解除を進めています。しかしながら、FRBが重視している「個人消費(PCE)デフレーター」、その中でも変動の激しいエネルギーと食品を除いた「コアデフレーター」の上昇率は、FRBの目標値である2%を下回る状態が続いています。

 直近18年1月のPCEコアデフレーターの上昇率は、前年同月比1.5%でした。このため、急いで金融緩和の解除を進める必要性は低く、利上げのペースは緩やかなものになると予想されます。利上げの速度が緩やかであれば、景気や金融市場に及ぼす影響も限定的なものにとどまる見通しです。

 以上のような財市場、労働市場、金融市場の需給、さらに金融・財政政策の動向を踏まえると、近い将来、米国景気が後退局面に陥る可能性は低いといえそうです。米国の景気拡大は間もなく戦後2番目の長さとなり、次は10年を目指すことになるでしょう。

(三井住友アセットマネジメント 調査部 礒合隆)

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