人事異動などで人材活性化は図れるが、業務や職務の見直し、入れ替えまでは難しい。その中でRPAという“トリガー”により、業務の新陳代謝も促進されたという。

 髙橋氏も、単純にロボットを導入し、その引き継ぎ的な研修を実施して終了するプロジェクトではないという認識から、継続的で自発的な利用につながる研修を実施すべく試行錯誤したという。

「講義形式のトレーニングのような研修ではなく、小規模に区切って従業員の方と接する機会を増やし、しっかり技術として身に付くまで見届けられる内容にしました」(髙橋氏)

半年で200人分の業務をRPA化

 RPA導入の効果はすでに表れている。業務改革室発足後、半年で、約200業務40万時間分、人数にして約200人分の業務をRPA化し、今後、3年間で1500人分の余力を出すことが目標だという。

「重要なのは、RPAの導入で創出した余力をどのように活用していくかであり、われわれは、『付加価値業務の拡大』『働き方改革の推進』『人員配置の最適化』などに充当することで、グループベースで圧倒的な生産性向上の実現を目指していきます」(山本氏)

導入効果を最大化しながら早期の導入を実現するEYACC

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング(EYACC)では、RPAツールの導入にとどまらず、導入効果を最大化するための戦略的なアドバイザリー支援を行う。早期の導入を実現するための反復的な開発アプローチや、フェーズ分割による段階的なプロジェクトのサポートにも対応する。また、クライアントのRPA担当者が継続して変革を推進できるように、適切な知識・経験を移行し、社内専門家の育成も支援することが大きな特長となっている。

RPAの本格導入展開に当たっては、①RPA CoE(センター・オブ・エクセレンス)組成②業務アセスメントと実装③チェンジ・マネジメント──の三つの推進フレームワークを連携させながら、プロジェクトを実行することを推奨している。業務要件に従って単にプロジェクトを推進するだけでなく、CoEによるスキル・ノウハウの標準化、タスク実施手順や統制の整備と順守、また導入効果を最大化するための業務変革のサポートがプロジェクト成功には不可欠となる。拡大画像表示

 具体例を見ていきたい。例えば、コンプライアンスの観点から、投資信託などのリスク性商品を偏って顧客に販売していないか、モニタリングする業務がある。

 これは顧客のニーズに適した商品を提案・販売しているかを確認する業務で、顧客との関係を大切にする、サービス品質向上の観点からも極めて重要な業務だが、銀行の商品・サービスが多岐にわたっていることに加え、従業員が一つ一つ確認するとなると、多くの時間と労力が必要だ。