市場縮小の逆風下で、“泡”でおいしさを訴求する
「ザ・プレミアム・モルツ」が躍進

 街路樹が息を吹き替えし、街を歩けば軽く汗ばむ新緑の季節。冷たいビールが最高にうまいシーズンに突入した。もっとも、少子高齢化、若者のアルコール離れ、安売り規制強化など、ビール業界を取り巻く環境は厳しい状況が続いている。2018年1-3月の大手ビールメーカー4社のビール類出荷(販売)数量の累計は、前年比1.3%減となった(日刊醸造産業速報4月3日号)。

 そんな中、気炎を吐いているのがサントリーのビール事業。新ジャンルの好調もあり、18年1-3月では前年を1%程度上回った。そんな中で、3月下旬からは「ザ・プレミアム・モルツ」が躍進。“泡”でおいしさを訴求する店頭プロモーションを開始した3月19日から4月1日の2週間の「ザ・プレミアム・モルツ」ブランド缶の販売は、前年比173%を達成。きわめて好調に推移した。

 「ビール離れ」が叫ばれる中でも、メーカー各社はうまさへのたゆまぬ努力を続けている。味はもちろんのこと、香りや口当たり、のどごし……、うまさに直結する、さまざまなポイントにこだわってきた。

泡には重要な役割が二つある……。

 今、次なるターゲットとして、注目されつつあるのは「泡」。このところビール関連のウェブサイトには、泡へのこだわりが伝わる情報があふれている。

 日本人の抱くビールのイメージは、「黄金色の輝く液体と、真っ白な泡」。絶妙なバランスでグラスに注がれたビールを見るだけで、気分も盛り上がってくるものだ。ただし、泡には、見た目以上に重要な役割が二つある。

 一つは、酸化を防ぐ「ふた」としての役割。泡はビールが空気に触れて味が落ちるのを防ぐとともに、炭酸ガスを逃さない。

 もう一つは、香りや味わいをより良くすること。泡はビールの香りが凝縮された、いわば “香りの粒”。泡があることで、香りを存分に堪能できるのだ。加えて、泡は苦味成分を吸着するため、麦芽本来のコクが生きてくる。