CDOの起用、専門組織の導入は
トライ&エラーが重要

 CDO CLUBの創設者、デイビット・マシソン氏はこう言う。「日本がCDOの起用で世界的に遅れていることは、デメリットでもあり、メリットでもある」。つまり、欧米にはすでに先進事例がいくつもあるので、それに学べばいいというのだ。CDO CLUBには、デジタル分野における一流の専門家やストラテジストが所属しており、CDO以外にも、CEO、CMO、CIO、CAO(Chief Analytics Officers)、CMT(Chief Marketing Technologists)、CTO(Chief Technology Officers)、CHRO(Chief Human Resource Officers)など、さまざまな役職のメンバーがいる。彼らを日本に招き、最新のナレッジを披露してもらうイベントも随時行っている。

 CDO CLUBとして、今後はグローバルな連携をいっそう強化していく方針だ。イスラエルの組織が非常に成功していると聞いているので、そこと連携するほか、日本主導でシンガポールにCDO CLUB SINGAPOREを創設する予定だ。シンガポールはもともとアジア地域で最初に組織を立ち上げようとしていた都市であり、政府組織含め、CDOが多いので、事業展開がやりやすいと考えている。

 最後に強調しておきたいのは、デジタルトランスフォーメーションに向けたCDOの起用、専門組織の導入は、トライ&エラーが重要だということ。中長期戦略など、タイムホライズンを長く持ちすぎると、「利益が出ているのだから、現状維持でいいじゃないか」といった空気が社内を支配することにもなりかねない。いわゆるアジャイル(すばやい)型のアプローチで、四半期、半年のスパンでトライ&エラーを繰り返し、大きく変革できなくとも、少しずつ変えていくこと。そのためには、失敗が許容される企業カルチャーの醸成も必要だ。事実、失敗経験があったからこそCDOになったというケースも聞く。

 経営トップに対しては、とにかく一度、試してみることをお勧めする。そして、自分自身で実行できなければ、外部からCDO人材の採用も検討する。いずれにせよ、デジタルトランスフォーメーションをしないと、グローバル競争で生き残れないことは、各種調査・研究から明らかになっている。

 日本でCDOが根づかないとすれば、それはデジタルトランスフォーメーションが進まないことを意味する。繰り返しになるが、少子高齢化が進展し、資源もない日本の企業が、従来通りビジネスを続けていたのではとうてい生き残ることは難しい。CDOを起用するか、どうかの前に、デジタルで自社のビジネスをどう変えていくかが、いままさに問われているのだ。

日本企業がデジタル変革で生き残るにはどんなリーダーが必要か

(構成/堀田栄治 撮影/宇佐見利明)