知財交渉力のない企業は
“サメ”型企業の標的となる

 今、グローバル市場では、そうした知財交渉力のない企業を“標的”とした“サメ”型の企業が増えているという。米国のコンサルタント、マーク・ブラキシルとラルフ・エッカートが、その共著『インビジブル・エッジ』の中で名付けた言葉で、こうした“サメ”型企業は、製造・販売を放棄して知財に全力投球する。特許をライセンス料と引き換えに使用許諾するだけなので、工場などの設備投資をする必要はなく、収入はそっくり知財の研究開発に回せる。こうなると製造・販売を行っているメーカーは太刀打ちできない。

 特にITサービス業界など、ビジネスモデル特許が主体の分野は警戒が必要だ。

 こうした“サメ”型企業の餌食にならないためには、知財の権利化と組織的な対応が必須になる。米国の経営学の権威、ジェイ B・バーニーが提唱した「VRIO分析」によれば、持続的な成長のためには、経営資源を「価値(Value)、希少性(Rarity)、模倣困難性(Inimitability)、組織(Organization)」(図表3)で評価することが大切だという。

 「革新的なビジネスを開拓しても、それはVとRを獲得したにすぎず、一時的な競争優位でしかありません。成功を持続させるためには、特許権の取得でIの競争優位性を維持することに加え、Oの知財戦略を可能にする組織が必要になるのです」と、正林所長は警告する。

 Iの競争優位性とはすなわち特許の取得であり、Oの組織とは知財経営の実務を企業側のニーズに応じて支援する、知財コンサルティングの存在である。同事務所は、そのIとOの役割を果たし、企業を“捕食者”から守るのである。