配当は、支払額から受取額を差し引いたネットで年率▲1699億ドルが計上されています。配当のマイナスは受取超を意味しますから、米企業が当期に巨額の配当を受け取ったというわけです。TCJAで海外子会社の利益送金への税制優遇措置が認められたことを踏まえると、これはFRBが指摘するように海外からの配当であり、いわゆるレパトリ(レパトリエーション、海外に投資していた資金を本国に還流させること)によるものと考えられます。TCJA導入前の配当は同約7500億ドルの支払い超であったことから、機械的に計算すれば、レパトリによる配当増は同9200億ドルに達したもようです。

企業債務は積み上がっているが、
返済能力に問題はない理由

 一方、バランスシート(貸借対照表)では、積み上がった債務の大きさが目を引きます。FRBの財務勘定によれば、米非金融企業の総負債残高は2018年3月末で20兆4046億ドル、対GDP比102.2%と、ともに過去最高を記録しました。

 もっとも、債務が積み上がっているにもかかわらず、企業の利払い負担はさほど高まっていません。GDP統計によれば、非金融企業の利払い費用は18年1~3月期で年率3039億ドルと、2010年以降のレンジ内に収まっています(この間における利払い費用の最大は2017年7~9月期の3174億ドル、最低は2013年7~9月期の2790億ドル)。利払い能力を見る指標のひとつであるインタレスト・カバレッジ・レシオ(金利および税金を支払う前の利益を支払金利で割ったもの、高ければ高いほど利払いの余裕度が高いことを意味します)も、ほぼ5倍台で安定しています。FRBの超緩和政策のおかげで、金利が低い水準にとどまっていることが、理由のひとつと考えられます。

 過去を振り返ると、これらの指標は、長短金利差が縮小して債券市場の利回り曲線(イールドカーブ)がフラット(水平)に近づくと、徐々に悪化へと向かいました。ところが、今回はこのような徴候も全く見られません。

 その理由として、(1)金利水準そのものが相対的に低い、(2)フラット化の意味するところが過去とは異なる、等が挙げられます。(2)については、例えば、米連邦公開市場委員会(FOMC)において、長短金利差の逆転を懸念していない参加者が、長短金利差縮小の理由を景気の減速ではなく、長期金利に上乗せされる期間プレミアム(タームプレミアム)が縮小している点に求めていることが指摘できます。景気後退が迫ってくると、将来の金融緩和を想定して長期金利が低下し、長短の金利差は縮小しますが、今回のケースは、そうではなく、景気の先行きに対する不透明感の低下等によってリスクが低下、それに伴って長期債利回りが低下し、長短金利差が縮小したと見られる、との議論です。

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企業業績も好調、景気の転換は当分先に

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