基幹事業の財産を活用
5つの事業分野で挑戦
医・食の分野では、抗体医薬品受託製造事業にも参入。今年2月新潟県に工場が完成している。PQQ(ピロロキノリンキノン)や、SAMe(S-アデノシルメチオニン)含有酵母などの微生物培養系製品の開発にも取り組む
新規事業開発部の部員は現在、2015年のスタート時から約3倍に増えた。そのうちの研究員は、チーム全体の3分の1ほどの人数だという。
「研究員は横のパイプを保つため、あえて1カ所に集めず、数カ所の研究所に席を置いています。既存事業部のR&Dはグループ内で完結させることが多いのですが、新規事業開発部は、外部の企業や研究機関とのアライアンス、M&A、オープンイノベーションも積極的に取り入れています」(茅野部長)
新規事業開発部がターゲットとする事業領域は、「医・食」「情報・通信」「モビリティ」「エネルギー」「インフラ」の五つ。資源エネルギーや化学品・素材製品、機能製品など、基幹事業の基盤と高い技術力を生かしながら、将来の成長エンジンになるような事業を創造するのが、同部のミッションである。
多層構成のプラスチック製容器「OXYCAPT(オキシキャプト)」のバイアルとシリンジ。重合と多層成形の技術も応用
「カンパニー単位やイベント的な設定ではなく、企業としての視点で長期的な研究開発を行うことには、研究員のスキルアップを図る意図もあります。ただし、経験がない分野への挑戦なので、柔軟にトライ&エラーで取り組むようにしています」(茅野部長)
発足から2年の間に取りやめたテーマも3割ほどあるという。その中で商品化につながりつつある一例が、酸素と水蒸気に対して高いバリア性を備えたプラスチック製多層容器「OXYCAPT(オキシキャプト)」だ。ガラス製注射容器に代わる“安全な医療用器具”として普及を狙う。
このほかにも、新規事業開発部では韓国のベンチャー企業と組み、大容量のデータを高速で伝送する「アクティブ光ケーブル」の事業化も進めているという。