ウェブポータルをベースに
総務のあらゆる業務をリモート化する
では、具体的に「総務リモートアウトソーシング」とはどのような仕組みなのか。これまで総務の業務では、社員が直接総務に声をかけるということが行われてきた。その代わり、リモートアウトソーシングではウェブポータルを経由して総務に作業の依頼を行うことになる。
ウェブポータルは、NOCがOffice365などクラウドシステムをベースにお客様ごどにカスタマイズしていくかたちになる。
たとえば「契約書申請・チェック・発送」の業務の場合。これまで総務は、各部署が顧客と契約を締結したあと、リーガルチェックを経て製本して顧客へ発送、印鑑が押された文書を保存するという面倒な作業を行ってきた。リモートアウトソーシングを利用すると、NOCのリモートセンターが契約書を受け取り、提携先の弁護士事務所がリーガルチェックを実施、製本して顧客先に送る。印鑑が押されて戻って来た文書は、スキャンして契約書管理システムの中にPDFとして格納、原本はナンバリングして外部倉庫に保管する。
「請求書支払い処理」も同様だ。さまざまな業者から送られて来る請求書を、NOCのリモートセンターが一括で受け取り、請求書が届いた情報をサーバーに載せてゆく。基本的に“紙”で届くものは全てスキャンしてPDF化、担当部署へメールで送る。文書は外出先からも自由に閲覧できるようになり、結果的にペーパレス化が促進される。
「リモートアウトソーシングのメリットは、業務の効率化が確実に図れること。もうひとつは、すべての業務がオンラインで行われるため、“言った、言わない”のトラブルや書類が紛失するなど、“オフライン”特有の業務ミスが無くなることです」(西上氏)
「総務リモートアウトソーシング」の導入は
AI化への端緒ともなる
そうはいっても、総務は現場にいるからこそ仕事になるというケースもある。だがその場合もプロセスを見直せばリモートアウトソーシングで解決できる可能性がある。
たとえば郵便物や宅急便が届く場合、業者の数は限られているので、あらかじめ取り決めをしておき、リモートでオフィスの扉を解錠し、荷物の配達伝票をカメラでスキャンして置いてもらう。そのデータを宛先の社員にメールやポータルで通知すれば、届け先に確実に着荷する。清掃業者や自動販売機の詰め替え業者などが社内に出入りする場合も、権限をリモートで設定できるセキュリティカードを利用し、モニターを通して社内を監視すれば、リモートで受け取り仕事も安全に完了することができる。
また、ポータルサイト内にはチャットボットも組み込まれ、質問もウェブで解決できる仕組みをつくっている。総務には、社内のルールや困り事についての質問も多く、意外とその対応に時間を割かれることが多い。それもNOCのリモートセンターが代行する。
「いま企業間では人材の流動化が進んでいるのに、社内ルールはバラバラのまま。転職者は前の会社と違うルールに戸惑い、総務に質問が集まります。最初はリモートセンターのヘルプデスクが返答しますが、データが集まればチャットボットで正確に返答できるようになります。ようするに、“総務は現場にいなければならない”という固定観念を捨てれば、理論上、リモートアウトソーシングは可能になるのです」と西上氏は強調する。
総務リモートアウトソーシングには、もう一つのメリットがある。総務に関する全ての業務がウェブポータルを通して発注されるため、たとえば総務部長は、月ごとの業務量を確実に把握できる。また、社員が何について困り悩んでいるかなどの情報が、データベースとして蓄積できる。それらのデータを分析することは、AI化への大きなステップとなり、社員が何を求めているかがわかれば、新しいサービスを生む土壌にもなる。