攻めのガバナンスを担う
社外取締役人材の不足が顕著
渕崎 ガバナンス改革の端緒は「執行と監督の分離」にありますが、それを実現するためには、まず社外取締役の量的な確保と、質的な向上を進める必要があります。
量的な課題については、直近の調査において複数の社外取締役を置く上場企業が9割を超えるなど前進してはいますが、社外取締役の独立性や、役割に応じた多様性、複数社を兼務している社外取締役が多いという状況を考えると、質を伴った量の確保という面ではまだまだ十分ではないと思われます。
単に形式的な要件を満たすだけでなく、実質を伴ったガバナンス改革を行うには、質的側面を考慮した社外取締役を選任することが大事です。
水田 弊社は総合人材サービスを担う企業グループですが、質と量の両面から社外取締役をどう確保するかというニーズは確実に増加していると実感しています。特に、中堅や地方の上場企業、IPO(新規株式公開)して間もない企業からは、切実な問題として相談を受けることが増えています。
具体的には、会計や財務、法務などのバックグラウンドを主体に「守り」のガバナンスを担う人材もさることながら、特に渕崎さんが指摘された「攻め」のガバナンスを担う人材へのニーズも高く、これらの人材の不足が顕著になりつつあります。
―良質な社外取締役を確保するための企業間競争が今後激しくなりそうです。
渕崎 まさしくその通りだと思います。社外取締役には、企業経営の経験があることが望ましく、さらには指名・報酬委員会などを担う社外取締役はそれなりの見識が必要です。
これらの人材を早期に確保するためには、企業サイドでも、あらかじめ社外取締役の「要件定義」を行う必要があります。社外取締役といっても監査等委員や指名・報酬委員など、さまざまな役割が存在し、それぞれに必要な権限と責任が付与されます。これらを踏まえて、どのようなバックグラウンドを持った人材が適切なのか、会社として明確なイメージを持つことが重要なのです。
実際のマッチングにおいては、これらの「要件定義」に基づいた期待役割と責任範囲、そして報酬水準などの条件を示すことになります。