家の寿命が延びている昨今、特に注目を集めているのが、生活スタイルの変化などに対応する「住まいの可変性」だ。そこで可変性の重要性や可変性の高い住宅の条件について工学院大学建築学部の鈴木敏彦教授に聞いた。
住宅と街の持続可能性
を支える可変性
鈴木敏彦
工学院大学建築学部教授
工学院大学建築学科修士課程修了。黒川紀章建築都市設計事務所からフランスに留学、欧州の大規模プロジェクトを担当。その後早稲田大学建築学専攻博士課程を経て、東北芸術工科大学助教授、首都大学東京准教授を歴任し現職。空間の移動性と可変性をテーマに領域横断型デザインを実践する。アジアデザイン大賞グランプリ、A’DESIGN AWARD 2016他受賞多数。
工学院大学建築学部教授
工学院大学建築学科修士課程修了。黒川紀章建築都市設計事務所からフランスに留学、欧州の大規模プロジェクトを担当。その後早稲田大学建築学専攻博士課程を経て、東北芸術工科大学助教授、首都大学東京准教授を歴任し現職。空間の移動性と可変性をテーマに領域横断型デザインを実践する。アジアデザイン大賞グランプリ、A’DESIGN AWARD 2016他受賞多数。
「住宅が壊される最大の理由は、老朽化などの物理的な原因ではなく、間取りが生活スタイルに合わないとかキッチンが狭いなど、使い勝手に問題が生じるからです。家族形態やライフスタイルの変化に応じて内部空間が変更できる可変性の高い家なら壊す必要もないし、長く住める。これから家を建てるなら、可変性がキーワードでしょうね」
こう指摘するのは、工学院大学建築学部の鈴木敏彦教授。住宅の可変性は、さらに「街づくり」にも影響を及ぼすという。
「家を壊せば、街の景観や都市環境も変わってしまいます。つまり、住宅の可変性は住宅そのものと街、両方の持続可能性を支える重要な要素なのです」(鈴木教授。以下、同)
日々の暮らしも、住宅の可変性が支えている。
「最も分かりやすい例は、かつての日本家屋の押し入れのある和室です。朝起きて布団を畳んで押し入れにしまい、ちゃぶ台を押し入れから出して食事をし、食器を片付けたらその場で仕事を始める。夜、ちゃぶ台をまた押し入れに片付けて、布団を敷いて就寝する。和室は究極の可変性を持っていたのです」
また、1年に1度、10年に1度、30年に1度といったスパンで起こる出来事(盆や正月、葬式、結婚式など)のための場所も、ふすまを開けて和室をつないで広くするなど、可変性によってつくり出されていた。そして蔵がそれを支えていたという。
しかし、現代の一般的な住宅に蔵はないし、押し入れも少なくなっている。これから家を建てるとき、可変性の高い住宅にするには何が必要なのだろう。