業界4位ながら圧倒的なプレゼンスを発揮し、絶対的な信頼のファンに支えられるのが牧野フライス製作所だ。その背景には、顧客からの課題に真摯に取り組み 「特別な一台」を送り出す「クオリティ・ファースト」の社風がある。
大きな活用可能性を
備えた工作機械群
井上真一 取締役社長
牧野フライス製作所(以下、牧野フライス)が開発する工作機械は、「玄人受けする機械」と評されることが多い。その心は、既存の機械でできることのさらに上を求めているユーザーが1人でもいれば、「さらに上のレベルの機械開発」に挑み、実現してきたからだ。
しかもその、「特別な一台として開発された機械が、別のユーザーに活用アイデアをもたらす」というアドバンス型の特徴を備えている。それが国内では業界4位規模ながら大手3社とは異なる独自のポジションを生み出してきた。
例えばマシニングセンタ。牧野フライスはその特徴を生かせるニッチ分野を狙う。牧野フライスのあるマシニングセンタ(V33i)は、当初は携帯電話のプラスチックボディーなどの金型の製作に向けて開発された。その金型は高い精度を実現し、これが昨今の多様な機能・デザインのスマートフォンの金型製作へと受け継がれた。さらにそれは分野を越えて補聴器の精巧な部品の金型製作に活用されるなど、最終製品の用途は広がっていく。
航空機分野でのスタンスも独自のものだ。そもそも航空機の部品を造る工作機械の開発は、コックピットの窓枠の製作用から始まった。実は、金型加工機に5軸仕様にするためのテーブルを備え付けたのが始まりで、それがさらに「アルミを高速で加工できないか」という要望に応える形で、主翼のウイングリブの削り出し加工へと発展する。要望に応えるために毎分3万回転、定格出力60キロワットという当時としては途てつもない高速・高出力の主軸を開発している。
「それはクオリティ・ファーストを掲げる当社ならではのこだわりと追究であり、そうした努力もあり航空機関連の売り上げは、現在では15%を占めるまでになっています」と井上真一同社取締役社長は語る。