2017年4月以降、新築の大規模商業ビルには省エネルギー基準への適合が義務化された。この省エネルギー基準に適合した建築物より、さらに一歩先へ進んだZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)が、今、注目されている。
これからのオフィスビルには
ゼロ・エネルギーが求められる
東京理科大学工学部建築学科
倉渕 隆 教授
倉渕 隆 教授
ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)は、高効率の空調や照明、給湯、昇降機などの建物設備と自然環境を有効利用したシステムで建物が消費するエネルギーを大幅に削減しつつ、太陽光発電などでエネルギーを創り、エネルギー収支ゼロを目指すものだ。国際エネルギー機関(IEA)の勧告を受け、日本は2014年4月に閣議決定したエネルギー基本計画で「20年までに新築公共建築物等で、30年までに新築建築物の平均でZEBを実現することを目指す」という目標を掲げた。
東京理科大学の倉渕隆教授は「オイルショック以降、産業部門と運輸部門に比べて業務部門(ビル)や家庭部門(住宅※)ではエネルギー消費量が2倍以上増加しており、省エネ・ターゲットになった」と語る。
国がZEBに前向きなのには、パリ協定で示した温室効果ガス削減の目標達成があるが、以下の目的もあると、倉渕教授は指摘する。(1)省エネによってエネルギーセキュリティーを高め、サステイナブル社会をつくる、(2)オフィスの生産性を向上させる、(3)ZEBを実現する技術を高め、今後この技術を必要とする発展途上国へ移転する。エネルギー資源に乏しい日本がZEBを普及させることで、資源国の思惑に左右されにくい国造りを行い、同時にZEB技術の輸出国を目指すというのである。
※住宅には、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)という基準がある。