「テクノロジーの刷新」について、ハモンド氏は「今日では、モバイルやソーシャル、店舗といった複数タッチポイントから、膨大な顧客データが刻々と送られてくるようになっている。それらをいかに瞬時に統合し、インサイト化するかが重要である」と指摘。ERP(基幹業務システム)やCRM(顧客関係管理システム)といった既存の記録システムだけでは十分な顧客体験は提供できないとの考えを示し、「顧客体験のための記録システム」を導入することの必要性を訴えた。
アドビは「顧客体験のための記録システム」として「Experience Cloud」を提供しているが、ハモンド氏はその特徴について、「膨大なデータの集約と解析、機械学習の力によるプロファイルの統合、統合されたプロファイルに基づく自在なコンテンツづくり」であると紹介した。
注目すべき点は、「Experience Cloud」を使うと膨大なデータの集約・解析やプロファイルの統合がわずかミリ秒単位で処理されることだ。ハモンド氏は「よりよい顧客体験を提供するにはデータの内容を十分に理解する必要があるが、解析に数日や数週間もかかってしまうのでは意味がない。瞬時にデータを解析できるからこそ、デジタルでも対面と同じようにきめ細やかなサービスをお客様に提供して、満足度を高められるのである」と説明した。
AIなどの技術と
人材の強化を両立させる
もうひとつの課題である「人材の強化」について、ハモンド氏は「これからは、エクスペリエンス・シンカー(顧客体験の考察者)ではなく、エクスペリエンス・メーカー(顧客体験の創造者)を目指すべきだ」と指摘。最新のテクノロジーを導入するだけでなく、それをどう活用すれば顧客満足度を高められるのかを考え抜ける人材が求められていると述べた。そのうえで、「アドビは『Experience Cloud』の利用ガイダンスや、ユーザー同士のコミュニティ、当社の専門家によるアドバイスなどをパッケージにした『Adobe Experience League』(アドビ・エクスペリエンス・リーグ)というサービスを提供しているので、ぜひ人材強化に活用していただきたい」と提案した。
続いて壇上に上がったのは、「Experience Cloud」を活用して顧客満足の向上に成功した英国のメディア関連企業、スカイでデジタルアナリティクス、データ戦略を担当するロブ・マクラフリン氏である。スカイは約7年前からアドビのソリューションを活用しているが、「膨大な顧客データをうまく活用できず、十分な顧客体験が提供できていなかった」とマクラフリン氏は振り返る。
そこで2017年8月に「Adobe Marketing Cloud」(アドビ・マーケティング・クラウド)を導入。同社は英国をはじめとする欧州5カ国で衛星放送・ストリーミング放送などを提供し、約2200万人の視聴者がいるが、「1日当たり1200万人の顧客に対する瞬時のレコメンドが可能となり、1年余りで収益が約1億ポンド(約150億円)増えた」とマクラフリン氏は説明した。