経済産業省
DXによりオペレーションの最適化を図り
行政からの生産革命を実現する
DXを推進する経済産業省は、「DX レポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」の中で、二つの課題を指摘している。
「既存システムが老朽化・複雑化・ブラックボックス化する中では、データを十分に活用しきれず、新しいデジタル技術を導入したとしても、データの利活用・連携が限定的であるため、その効果も限定的となってしまう」、「既存のITシステムがビジネス・プロセスに密結合していることが多いため、既存システムの問題を解消しようとすると、ビジネス・プロセスそのものの刷新が必要となり、これに対する現場サイドの抵抗が大きいため、いかにこれを実行するか」。
これらはDXによりビジネスをどう変えるかといった経営戦略の方向性を定めていくこと以前に解決しなければならない課題である。先の2社の例は、課題をうまく解決した成功例といえる。
では当の経産省自身のDXは、どこに力点が置かれているのだろう。
役所と企業の関わりの多くは書類のやりとりとなる。こうした手続きを一元的にデジタル化することで、政府全体では年間数億件に達する行政手続きが圧倒的に簡単・便利になっていく。肝心なのは、単に紙を電子画面に置き換えるのではなく、手続きそのものを見直す業務の見直しと、業務間での標準化を徹底することだ。それにより、同じ情報は一度の入力で済むようになり、事前に添付漏れなどの問題点が解決できるため役所との調整が不要になり、手続きのためだけに書類を作成する手間が省ける。
つまりデジタルによる「オペレーションの最適化」である。これにより申請する企業側と審査する行政側双方の負担が軽減され、リソースが有効に使えるようになる。いわば「行政からの生産性革命」である。
産業保安・製品安全分野を例にとれば、年間約25万件ある事業者の手続をデジタルで行えるようにするため、件数の多い手続きから簡素化の議論を行い、システムの構築を2018年度より進めている。また、システム構築と並行して、集まったデータを利活用することで更なる産業保安・製品安全の高度化を図るための実証も進める計画だ。
DXで行政の書類仕事が軽減され、あらゆるデータの共有・活用が進むことで、企業(国民)ニーズにあった政策を立案し、従来の行政がアプローチできていなかった個々のニーズに応じて必要な政策をきめ細かくプッシュ型で届けるモデルが実現する。DXの推進は、行政のあり方そのものを変えることになる。
経済産業省 http://www.meti.go.jp/policy/digital_transformation/article04.html