節税と家族の健康管理はレシートの見直しから
健康社会を育む「セルフメディケーション」

国内外で高い評価を得られながらも、存続が危ぶまれる日本の医療保険制度。すべてを国まかせ、医者まかせでは、自分や家族の健康は守れない。自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てをする「セルフメディケーション」の考え方から、税制の賢い活用法まで、参議院議員の武見敬三氏と龍角散の藤井隆太社長が語り合った。

節税と家族の健康管理はレシートの見直しから健康社会を育む「セルフメディケーション」武見敬三
参議院議員
 たけみ・けいぞう/1951年、東京都生まれ。95年に参議院議員に初当選。厚生労働副大臣、ハーバード大学公衆衛生大学院研究員、日本国際交流センターシニアフェロー、慶應義塾大学医学部客員教授などを務める。ハーバード大学時代よりグローバル・ヘルスに関する研究を続け、2011年には世界的医学雑誌「ランセット」日本特集号に尽力する。13年から参議院議員4期目。

 保険証一枚で、どの医療機関でも気軽にアクセスできる日本の医療保険制度は、国内外で高い評価を得てきた。

 医療保険制度を評価する指標の一つに「平均寿命」がある。日本の平均寿命は、高度経済成長期が終わった1970年代半ばに欧米に並び、今や男女共に世界最高レベルにある。これを実現できた理由の一つは、61年に国民皆保険制度ができ、拡充されてきたことだろう。

 現在、日本の医療保険制度では、患者自身が負担する医療費は全体の1〜3割。残りを保険料と税金で賄う構造になっている。懐具合を心配せずに質の高い医療が受けられる優れた制度なのだ。

 しかし、「急速に進む少子高齢化と人口減少、そして財政の赤字拡大、日本経済の低成長化などによって今、日本の医療保険制度は存続が危ぶまれる状況にあります」と警鐘を鳴らすのは、参議院議員の武見敬三氏。

 2017年度の概算医療費(国民医療費の98%に相当)は42兆2000億円で、前年度を9000億円上回り、過去最高を記録した。医療費の増加は、国の財政を圧迫する。これから団塊の世代が続々と75歳を迎えるだけに、医療費はさらに増える可能性が高い。

節税と家族の健康管理はレシートの見直しから健康社会を育む「セルフメディケーション」

 医薬品メーカー龍角散の藤井隆太社長は、「今、私たちが医療費を抑制できなければ、そのツケは子供や孫の世代へいってしまいます。それだけは避けなければなりません。医療費は一人一人の健康や医療に対する意識によってコントロール可能な部分が大きい。それだけに、今こそ私たちは意識と行動を変えなければいけないと思います。軽度な症状の場合、すぐに医療機関に頼るのではなく、薬局やドラッグストアで購入できる医薬品を用いて自分で手当をするなどの姿勢も必要です」と変革を促す。

 WHO(世界保健機関)では、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てをすること」をセルフメディケーションと定義している。食事や運動による健康管理も含む、自発的な健康管理のススメである。

 昔の日本の家庭には風邪薬や胃腸薬などの常備薬が入った薬箱があり、のどがちょっと痛い、お腹の調子が今一つといった時は、常備薬を飲んで家庭で治していた。多くの日本人にとってセルフメディケーションは、普通の考え方だった。

 「もちろん症状が重い時にはすぐに医療機関を受診すべきです。しかし、薬剤師に受診すべきか相談したり、医師が監修する一般用医薬品検索サイトを使ったり……、最近は医薬品を案内してくれる便利なアプリなどもあります。自分で考え行動する姿勢が必要なのです」(藤井社長)

 少子高齢化が進む今、健康寿命の延伸は国の政策の基本である。多くの人がセルフメディケーションの考え方を身につけ、健康寿命を延ばすことは、国民皆保険制度の持続可能性を高めることにもつながる。

節税と家族の健康管理はレシートの見直しから健康社会を育む「セルフメディケーション」

OTC医薬品やヘルスケア用品選びの案内アプリ「健こんぱす」

「健こんぱす」は、医師が薬剤師と考えた健康アプリ。いくつかの質問に答えるだけで症状に応じたOTC医薬品やヘルスケア用品を紹介してくれる。重篤な症状が疑われる場合には医療機関への受診も案内。セルフメディケーションに役立てたい。
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