節税と家族の健康管理はレシートの見直しから
健康社会を育む「セルフメディケーション」

誤解も多い医療控除
服薬補助ゼリーや交通費も対象に

 セルフメディケーションを実践し、医薬品を購入した際に活用できるのが医療費控除である。支払った医療費が一定額を超えるときは、その額を基に計算される所得控除を受けることができる。

 「医療費控除には二つの目的があります。一つは、医療費に関わる個々人の負担を税制上で軽減しようという従来からの目的。そして、新たに加わった目的が、日頃からご自身で健康管理を心がけてもらう“セルフメディケーション”という考え方を身につけてもらうことです。それが医療費の適正化につながり、存続が危ぶまれている医療保険制度を守ることになります」(武見氏)。

 医療機関で支払う金額が医療費控除の対象になることはよく知られているが、誤解も多い。例えば、処方せんなしで薬局やドラッグストアで購入する一般の医薬品(OTC医薬品)も対象になる場合があるが、その認識はまだ十分浸透していないのが実情だ。服薬補助ゼリーやオブラートなど医師の指示により治療薬を飲むために必要なもの、通院や入院のために利用したバスやタクシーなどの交通費、治療のためのマッサージ・鍼灸の施術費用なども控除対象に含まれる。

 納税者本人だけでなく、生計を一つにしている家族の分も合算できるため、潜在的な申告対象者は少なくなさそうだ。

節税と家族の健康管理はレシートの見直しから健康社会を育む「セルフメディケーション」藤井隆太
龍角散 代表取締役社長
ふじい・りゅうた/1959年、東京都生まれ。小林製薬、三菱化成工業(現・三菱ケミカル)を経て、94年に龍角散に入社。翌年から現職。東京商工会議所1号議員、日本商工会議所社会保障専門委員、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会臨時委員、東京生薬協会会長。

 2017年からは、医療費控除の特例として「セルフメディケーション税制」がスタートした。医療用から一般用に切り替えた(=スイッチした)、いわゆる「スイッチOTC医薬品」を、1万2000円を超える額、購入した人が利用できる制度である。通常、医療費控除が適用されるのは、年間の医療費の自己負担額が10万円を超える人だが、この金額に達していない人でも利用できる可能性はある。

 ただし、課題もある。制度が広く一般に認知されていないのだ。「その原因の一つにセルフメディケーション税制の控除対象となる、スイッチOTC医薬品の数が少ないことが挙げられます」(藤井社長)という。スイッチOTC医薬品は、医療用と同じ成分のため、薬剤師によるしっかりとした服薬サポートが必要とされる一方で、効果も高い。これから製品の拡充が求められる分野だろう。

 セルフメディケーション税制を適用する際に気をつけたいのは、従来の医療費控除と併用できない点だ。どちらを利用する方が節税効果が高いのか、よく考えて確定申告する必要がある。医療費控除の明細書(集計表)を提出すれば領収書の提出が不要になるなど、2017年から医療費控除の申請法が変わっている。詳しくは国税庁のホームページを参照していただきたい(従来の医療費控除とセルフメディケーション税制の減税額を試算するコーナーもある)。

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