採択から3年、国連のSDGs(持続可能な開発目標)は確実に社会に浸透しつつある。
国際社会が合意し、検証を前提とした17の目標を、今後、企業はどのように活用すべきだろうか。

慶應義塾大学大学院
政策・メディア研究科
蟹江憲史教授

国際連合大学サステイナビリティ高等研究所シニアリサーチフェロー、欧州委員会Marie Curie Incoming International Fellowなどを歴任

​ SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年のあるべき姿として、国連加盟国間でコンセンサスが取れている目標である。前身に当たる「ミレニアム開発目標」が基本的に途上国を対象としていたのに対し、SDGsは先進国も含めた包括的な内容となっている。

「大胆な目標で現実とのギャップは小さくありませんが、だからこそ世界中の人々が望み、期待している変化のヒントが隠されているとも言えます」
 そう語るのは、SDGsに詳しい慶應義塾大学大学院の蟹江憲史教授である。
 政府や経団連のサポートもあり、国内のビジネス界におけるSDGsに対する認識は急速に高まっている。一方で一般の認知度はまだ決して高くはない。
「だからこそ今、SDGsを経営に取り込むメリットは大きいと思います。私の研究室でも複数の大企業との協業が始まっていますし、経営者と接する機会も増えてきました」

 CSR(企業の社会的責任)は、本業とは離れた部分で貢献する企業も少なくなかったが、SDGsは企業のビジネスそのものも同時に成長させる可能性が高い。その点が大きな違いだと蟹江教授は説明する。
「企業の収益の一方的還元ではなく、利益を出すこととの両立が可能です。SDGsは企業の成長と経済発展の持続性を、対立軸ではなくセットで考えることができるものなのです」