戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(エスアイピー)とは、総合科学技術・イノベーション会議が司令塔機能を発揮、府省の枠や旧来の分野を超えたマネジメントにより、科学技術イノベーションを実現する国家プロジェクト。第2期のスタートに当たり、総合科学技術・イノベーション会議有識者議員からなるSIPガバニングボードで座長を務める橋本和仁氏に抱負と課題を聞いた。
有識者議員(SIPガバニングボード座長)
橋本和仁氏
(国立研究開発法人 物質・材料研究機構理事長)
日本の経済再生と持続的な成長を実現するには、科学技術イノベーションが不可欠になる。その認識の下にスタートしたのが、国家プロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)だ。これは、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が、府省や分野の枠を超えて自ら予算配分を行い、基礎研究から出口(実用化・事業化)までを見据え、規制や制度改革を含めた取り組みを推進するというもの。
ガバニングボード座長の橋本和仁氏は、SIP誕生の経緯をこう説明する。
「科学技術を核にして日本の経済再生を図るためには、科学技術のイノベーションが必要ですが、従来の縦割り行政の中では限界がある。内閣府が予算を持てば、イノベーションに関連する省庁に“横串”を刺して、さまざまなステークホルダーをまとめ、プロジェクトを迅速に推進することができる。SIPはそのような意図を持ってスタートしたのです」
今、社会の問題は複雑化し、科学技術の基礎研究と出口の距離は近くなっている。最先端の学問はすぐに実用化・事業化されるため、研究開発の段階から規制や制度改革を視野に入れる必要がある。そのためSIPでは、基礎研究から社会実装までを1人の人間が俯瞰して見られるよう“プログラムディレクター(PD)”を設置。予算配分の権限を持たせ、スピード感を持ってプロジェクトを推進する仕組みを構築している。