「ヒト」起点へのビジネスモデル変革を
全社員の働きがい創出によって実現する

シリーズ対談「人材戦略と健康経営」 第2回:東日本旅客鉄道

3つの「打破」で
組織文化を変える

鳥越:変革に向けての制度や仕組みの整備は着々と進んでいるようですが、組織文化や人の意識を変えるのは、一朝一夕にはいきませんね。

喜㔟:大きく3つの課題があると考えています。

 1つは先ほども申し上げた、外に向けたマインドの醸成、つまり「内向き思考の打破」です。ビジネスの視点を「インフラからヒトへ」と変えたからには、社員も内向き思考を打破し、お客さまや地域の皆さまが我々に対して何を期待しているのか、あるいはどういう意見をお持ちなのか、それを鋭敏にとらえられる感度を養うことが、継続的な課題になります。

 2つめは、「前例主義の打破」。変化がこれほど激しい時代ですから、昨日よかったことが明日も通用するとは限りません。前例踏襲ではなく、新しいチャレンジが当たり前になるような職場風土をつくっていきます。

 そして、3つめは「自前主義からの脱却」。我々はこれまで、ハードもソフトもできるだけ自前で構築しようとする傾向が強かったのですが、これからは外部とのアライアンスをどんどん進めていかないと、時代に取り残されてしまいます。

 たとえば、自宅から目的地までのさまざまな移動手段を、「Suica」(スイカ)を共通基盤として1つのアプリで結びつける「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」の構築を「変革2027」では掲げています。鉄道とバス、タクシー、ライドシェアなどを結びつけてシームレスに移動できるサービスを実現しようということですが、すでにその開発や実証実験を外部とのアライアンスによってスタートさせています。

鳥越:そうした革新的なサービスを生み出すためには、前向きな姿勢と熱意をもって仕事に取り組める状態をつくり出すことが大切ですね。

喜㔟:社員には、未来を自らの手で拓いているという、わくわく感をもって一緒に変革に取り組もうと語りかけています。変革を実現するのは、一人ひとりの社員です。社員が健康でいきいきと働けることが、変革を実現する決め手となります。そうした考えに基づき、来年度に向け新たに健康経営ビジョンを策定し、これまでの「健康」の考え方を変革しながら、健康経営をいっそう先に進めていく方針です。

鳥越:業績目標達成の手段として人的資源を浪費する企業は、結局、経営の健全性を失ってしまいます。ワークエンゲージメントの指標などを常に確認し、組織の健康状態を把握することも企業の成長には欠かせません。

 社員・家族の幸福の実現とグループの持続的成長を一体的に実現させようとする御社のチャレンジは、日本の産業界を勇気づけると思います。

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