2011年以降、日本でも太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの普及は加速度的に進んできた。この国で、再生可能エネルギーをエネルギーの主軸とさせ、この分野で世界をリードするには何が必要なのか。一般社団法人自然エネルギー推進会議の代表発起人である小泉純一郎元総理大臣にお話を伺った。聞き手は、東日本大震災の際、石巻・気仙沼にて太陽光発電パネル設置のボランティアを行い、自然エネルギーの可能性を予見し、2011年4月に株式会社Looopを創業した中村創一郎だ。各地の現場を歩いた二人。話題は多岐にわたった。
日本でもアフリカでも、
農業と両立する太陽光発電が始まっている
中村:2018年7月3日に発表された第5次エネルギー基本計画では、2030年には、再生可能エネルギーの電源構成比率を22~24%とするなどの目標が掲げられています。これらの数字を小泉さんはどのように評価されますか。
小泉:再生可能エネルギーの割合を増やそうというのは素晴らしいこと。2018年秋の時点で、電源構成比率の15%を占めています。2011年から約7年間でここまで伸ばしてきたのだから、もっとスピード感をもって拡大していけるでしょう。
中村:再生可能エネルギーの比率が早く100%になるようにと私たちも事業を進めていますが、ただ、今の日本の送配電系統は、太陽光発電のように発電量に変動のある電力の送配電に最適化されていないという問題があります。現状以上の送配電が不可能な、いわゆる空き容量ゼロの系統もある中で再エネ電力をもっと導入していくためには、系統の増強や新設が必要となります。
小泉:政府がしっかり支援しないからですね。支援をすれば、それは変わりますよ。実際に太陽光発電所は、日本各地に増えているでしょう。
中村:最も安い電源として太陽光発電の導入が拡大されています。私たちも2011年の創業からこれまでに、国内約2000カ所に、合計約300MWの発電所を設置してきました。しかし、そのメリットを十分に理解されることがないので、今、私たちは色々なことに気を配りながら、知恵を絞りながらやっています。最近は農地で農業を続けながら太陽光発電もできる、ソーラーシェアリングも推進しています。
小泉:私も千葉まで、ソーラーシェアリングの様子を視察に行ったことがありますよ。日本語では営農型太陽光発電といって、畑に支柱を立てて、パネルを屋根のように載せるんだけれど、完全に敷き詰めるわけではないから地面にも日光が射して、農業もできるんですよ。
中村:もちろん、当社もその取り組みも進めています。私たちの場合はビニールハウスの上にパネルを載せ、ビニールハウス内では付加価値の高い果物を栽培しようと考えています。現在は岡山、それからケニアでもプロジェクトが進んでいます。ケニアの場合は、パネルで日差しを適度に遮ることで土の保水率も上がり、それまでは生産できなかった作物が育つというメリットもあることが分かってきました。今は、イチゴに挑戦しているところです。
小泉:ちょうどいい日陰ができるわけだ、それは現地の人も喜ぶでしょう。それにしてもいろんな知恵が出てきているなと感じるね。太陽光発電だけでなく、風力や水力、地熱発電でも新しい知恵が出てきているでしょうね。