守りと攻めの両面から
個人と組織の健康を一体的に実現する

シリーズ対談「人材戦略と健康経営」 第3回:中外製薬

グローバルトップ水準の
社員エンゲージメント

海野:いきいきと働ける職場づくりという点では、健康面でのサポートに加えて、多様な働き方についての支援も重要です。その点で、かつて当社の課題の1つとなっていたのが、女性のMR(医薬情報担当者)に働き続けてもらうことでした。結婚・出産といったライフイベントを機に離職してしまうMRが多かったのです。
 対策として、2010年にジェンダ ー・ダイバーシティにフォーカスした社長直轄のワーキングチームを発足し、12年にダイバーシティ推進室を設置しました。その後、育児休職制度や育児休職からの復職支援、子どもの看護休暇などを整備したほか、上司に対する教育も徹底しました。できるだけ復職しやすい環境を整えるには、受け入れる側の準備も不可欠だからです。現在は、在宅勤務を組み合わせた職場復帰など、より柔軟な復職の仕方も選べるようになり、育児休職からの復職率はほぼ100%となっています。
 また、MRについては、配偶者の転勤に合わせて同居可能な勤務地への異動を支援する制度も取り入れました。こうした施策によって、女性MRの離職率は取り組み開始から5年程度で3%台へ低下、女性MRからの管理職登用も出てきました。

上野:日本の会社では、健康経営やD&Iが、病気休業や離職などを防ぐ「守り」のための施策ととらえられがちですが、守りだけでは企業価値は向上しませんし、医療や患者さんの抱える課題を解決するという製薬企業としてのミッションを果たすこともできません。
 当社では「守り」と「攻め」の両方の姿勢を持ちながら、「個人の健康」と「組織の健康」の一体的な実現に向けて、今後も邁進していきたいと考えています。

鳥越:従業員の皆さんの意識も変化していますか。

海野:エンゲージメントと社内環境に関する社員意識調査を2018年に実施したところ、エンゲージメントはグローバルトップ企業の水準にあるという結果が出ました。ただ、リソースの充足や業務のプロセス、協力体制など社員を活かす環境面では、グローバル水準で足りていない部分も見えてきたので、ワークライフシナジーをもっと追求していきたいと考えています。

鳥越:心身ともに健康な従業員が、高いワークエンゲージメントを感じながら働いている会社は、間違いなく生産性や企業価値が上がるはずです。だからこそ、投資家などのステークホルダーも御社に高い期待を寄せているのではないでしょうか。
 当社は“活力ある個と組織創り”として「健康経営・人材開発事業」、“安心して働ける環境創り”として「両立支援事業」への飛躍を目指していますが、御社はまさにそれを体現されていると実感しました。

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