物事を自分ひとりで決められない子どもたちが増えています。その子たちを社会に送り出すためには、親自身が就職活動のリアルをきちんと理解し、我が子と情報を共有していくことが大切です。親世代の頃とは異なる価値観や制度への対応はどうすればいいのでしょうか。みなさんのお悩みに、記者として様々な業界を取材してきた間杉俊彦がお答えします。
Q1
親のわたしが学生の時にはあまりなかった「グループディスカッション」が、最近はとても重要と聞きました。新卒採用する企業は「グループディスカッション」で、受験者の何を見たいのですか? 子どもに気をつけさせることは何ですか?
組織としてビジネスを展開する企業は、社員同士が違う意見をぶつけ合い、そこから新しい価値を創り出すことを求めています。グループディスカッションは、そのための力を見極めるためのひとつの方法です。
1961年、東京生まれ。86年、ダイヤモンド社に入社し、「週刊ダイヤモンド」記者として流通、化学・医薬品、家電、運輸サービスなどの各業界を担当。同誌副編集長を経て、06年より人材開発編集部副部長。人材育成をテーマとする書籍の編集を担当するほか、ダイヤモンドオンラインで、『なぜ職場で人が育たなくなったのか』を連載。毎年、複数の大学で、模擬面接や業界研究の講演を行っている。
ディスカッションという言葉から、「議論で相手を打ち負かせば能力を示せる」と考えてしまうのは誤解です。自分の主張を展開することはもちろん大切ですが、同時に、グループ内の他の人の意見にも耳をじっくり傾けたうえで、グループ全体の意見形成のためにどれほど貢献しているかが評価のポイントとなります。
ディスカッションの司会役になることで、異なる意見を集約していく姿勢が高評価されることもありますが、場を仕切らなくても、あまり発言しないメンバーから意見をうまく聞き出したり、他のメンバーの発言を補完したり、誰もが前向きに発言するように促し、議論を盛り上げていく役どころが必要です。「私がリーダーをやります!」と手を挙げてはみたものの、自分の主張ばかりを大切にしたり、相手の意見を否定しがちなら、チームプレイヤーとしては疑問符がつきます。往々にして、そんなふうに自己顕示欲の強すぎる学生も見受けられますが、それは褒められるものではありません。
総じて、メンバー一人ひとりに目を配り、個々の発言の真意を理解し、各人の能力を最大限に引き出そうという姿勢で臨めば、グループディスカッションでは良い評価を得られるはずです。
言うべきことは言いつつ、聞くべきことは聞く。主張するところは主張して、受け入れることは受け入れる――そんな姿勢でチーム全体に貢献していく立ち居振る舞いを面接官は見ています。
大声で自己主張する必要はないのですが、だからと言って、自分からまったく発言しないのでは、評価のしようもありません。引っ込み思案の人は、常日頃から自分の意見を言えるようにしておく必要があるでしょう。立て板に水のようにしゃべる必要はありません。ゆっくりと、確実に自分の考えを伝えられるように準備しておきたいものです。
Q2
リクルートスーツや就職活動用のカバンは、どれくらいの価格帯のものを子どもに勧めるべきですか? どういうブランドが適当ですか? 持ち物を含めたファッションは面接時に重要ですか?
業種にもよりますが、採用に携わる面接官は服のことはあまり見ていないというのが実態です。数万円のリクルートスーツでも、高価なブランドのものでも大差はないでしょう。スーツや持ち物の価格帯だけで合否が決まることはまずありません。
ただ、清潔感は心がけたいですね。意外に見落としやすいのが靴。たまに、靴を汚れたままにしている学生がいます。私が面接官をしていた時、学生の服装にはさほど気をとめませんでしたが、足元はとても気になりました。清潔な格好で相手に不快感を与えないという社会的な「常識」を大事にしたいところです。
最近はビジネスの世界でもノーネクタイが一般的になってきました。また、持ち物をリュックに入れて運ぶ(リュックを背負う)ビジネスパーソンも増えました。就活でこのような服装をしても合否に直結するとは思えませんが、面接官の中にはラフな格好に違和感を持つ人もいます。IT系の新興企業なら、ノーネクタイやリュックで構わないところもあるでしょう。しかし、金融系などは、きちんとネクタイを締め、一般的なビジネスバッグで面接に臨むべきです。
服装について言えば、人と違った格好で目立とうとする学生をときどき見かけますが、それは間違った考え方。私自身が面接官だった時、「最近の学生は、みんながみんな、黒か紺のスーツでつまらない」と思ったことはあります。しかし、だからと言って、目立った格好の学生に注目して採用したかと言えば、そんなことはありません。個性を発揮したいのであれば、面接やグループディスカッションの場で自己表現するのが妥当でしょう。