Q3
新卒として無理に就職しないでも、「“そのうち”気に入った会社があったら、30歳までに就職すればいいんじゃない?」と親の自分は思っています。これって、間違った考え方ですか?
卒業後すぐに就職せず、何年もアルバイトなどを続けている若者がいます。時間をじっくりかけて自分に合った仕事を探すことは良いことですし、それを理解したうえで我が子を見守る親御さんの姿勢は素晴らしいでしょう。決して間違ってはいないと思うのですが、こうした姿勢には明らかな誤解もあって、注意する点があります。
誤解のひとつ――それは、自分に合った企業が「そのうち」見つかるという考え方です。しかし、当たり前のことを言うようですが、そもそも、あらかじめ「自分に合っている」と分かる仕事など、世の中にはありません。「そのうち、そのうち」と言っているうちに時間が経ってしまい、やりたい仕事に就くチャンスや巡り合う機会が減っていくのが現実です。
昨今、「就職浪人はそれほど不利にならない」という傾向もありますが、それは、ごく一部の大学の卒業生に限ったことで、卒業後の年数が経てば経つほど、企業にとっての人材価値が下がっていくのが定理です。入社できる会社はどんどん少なくなり、就ける仕事の範囲は狭まっていきます。
「気に入った」会社が見つかることも稀と考えるべきでしょう。というのは、就職浪人している若者の多くが「やりたいことが分からない」と言います。やりたいことが分からないのに、気に入った会社が見つかるわけがありません。
「30歳までに」というのはあまりに悠長過ぎます。たとえ、30歳で就職できたとしても、22歳で卒業して働き始めた人間とは、すでに8年の差がついています。新卒社員の仲間同士で会話がかみ合わないこともあり、いたたまれない気持ちになるかもしれません。
一方で、会社員として働くことが人生の唯一の選択肢ではないとも私は思います。「子どもを信頼して待つ」親御さんの姿勢に異論はありませんが、どこかに「期限の〆切」も必要でしょう。
実家に自分の部屋があり、食事も出てくる、洗濯もしてくれるというのではいつまで経っても自立はできません。家賃分のお金を家に入れるくらいは、子どもに求めるべきであり、「社会で生きていくためのコスト」が実感できないようでは、就職しようという切迫感など生まれるはずもありません。
少なくとも25歳までには、漠然とでも自分のやりたいことを見つける必要があるでしょう。それが無理ならば、やりたくないことだけをはっきりさせる方法もあります。
20歳を過ぎれば大人ですから、本人(子ども)の将来は最終的には本人が決める。それは当然のこと。しかし、だからこそ、経済的な面でも、子どもには大人としての振る舞いを求めるべきです。
Q4
SNSを子どもは多用していますが、企業の人事担当者は受験者のFacebookなどをチェックするものですか?就職活動中のSNSで子どもが気をつけることはありますか?
学生のSNSの投稿を、企業の採用担当者がチェックしていないとは言い切れませんが、一般的に考えて、それが合否に直結することはないでしょう。
ただ、就活中の学生が意見を寄せる(自由に書き込める)サイトで見かけるのが、「面接官が意地悪だった」「(人事部の)態度が最悪」など、接点のあった企業担当者を誹謗中傷する書き込みです。
就活において、慣れない環境や大人の社会に接すれば、不愉快な思いもするでしょう。うさを晴らしたい、愚痴をこぼしたい気持ちも分かりますが、万が一、相手企業の担当者がネガティブな書き込みを目にしたらどう思うでしょう? 「この学生とは働きたくない」と考えるはず。
また、「意地悪」「最悪」などの印象は、得てして主観的なものなので、立場によっても180度変わります。企業の担当者としても然るべき理由があってそうした態度を取っているのかもしれません。不愉快に思ったとしても、「自分の方に非があったのでは?」と客観視できるくらいが優秀な就活生でしょう。
就活のネット掲示板やSNSは匿名でも語れるため、相手を非難するものが多くなります。しかし、匿名であっても、書かれた側は非難した相手をうすうす想像できるもの。顔が見えないSNSだからこそ、相手に失礼のないように、社会常識を心がけて向き合うべきでしょう。