ITやAIを利用した
M&Aの新手法が登場
その事業承継の選択肢として、最近増えているのが第三者への承継、つまりM&Aによる事業承継である。一般的にオーナー経営者は、自身の会社への思いが強いことから親族内承継を希望するが、適任者がいない場合、M&Aが選択肢に挙がる。だが、思いが強いが故に、これまで事業売却への抵抗感を持つオーナーも少なくなかった。
「中小企業の経営者は、そもそもM&Aの手法の手続きの理解や知識が少なく、相手先企業の情報が分からないという要因もありました。実際に自社単独でM&A手続きを進めるのは困難で、専門の仲介機関に頼むことになるのですが、成功報酬には下限があり、経済的な負担も大きかった。しかし最近は、IT技術の進化で新しい潮流が生まれ始め、中小企業がM&Aをより身近に検討できるようになってきたのです」(筒井室長)
例えば、IT技術を利用し、オンラインと従来型の地道な人的なサポートとを組み合わせた融合型のビジネスモデルや、独自のプラットフォームを構築し情報検索コストを削減して低価格のサービスを実現する仲介会社などが登場し始めている。
「マッチングがポイントであるM&Aは、もともとIT技術やAI(人工知能)と親和性が高く、こうした展開は必然ともいえるかもしれません。M&Aに関して従来の仲介機関のサービスがフルコースだとしたら、最近のサービスはアラカルトでメニューを選べる方式とも言えます。M&Aのインフラが整ってきたのは確かだと思います」と筒井室長は語る。