社会保険、雇用保険などの手続きは、バックオフィスの仕事の中でも特に効率化が遅れている。これは会社全体の「働き方改革」を妨げる思わぬネックだ。社労手続きのデジタル化は、「働きやすい会社」の第一歩でもある。
あまりにも時間ロスが多い
社労手続きの実態
渡辺尚人
オフィスステーション事業本部本部長
企業のIT投資は、収益を生まないバックオフィス業務よりもフロントオフィス業務に偏りがちだ。結果、総務・人事などは旧態依然としたアナログ作業を強いられ、繁忙期には、当たり前のように残業を強いられる。
「バックオフィス業務の仕事の中でもとくに効率化が遅れているのが、社会保険、雇用保険などの申請手続きです。電子政府の総合窓口である「e‐Gov」を通じて電子申請する方法もありますが、大半の企業では、いまだに担当者が申請書類を持って年金事務所やハローワークに行き、窓口で延々待たされているのが実情です」
そう語るのは、企業のバックオフィス業務のコンサルティングを行うエフアンドエムの渡辺尚人氏だ。
社労手続きは、申請書を作成するだけでもひと苦労だ。
手書きの場合、1人分を作成するのに約1時間かかる。人員の出入りが激しい年度末や年度初めには、申請書の作成だけで丸一日潰れてしまうこともある。
「離職関連の場合、賃金や勤怠データを集計して書類に記入しますが、計算間違いや転記ミスがあると申請受理までの時間が長引くので慎重にならざるを得ません。それ以前に、1文字ずつ間違いなく書き込む作業に時間を取られてしまうのです」
電子申請ならパソコンで入力できるが、間違いがないように一度下書きを書いてから入力するという、笑えない二度手間をしている例もあるようだ。
また、「社労関連の申請書は100種類以上ありますが、記入内容には共通項目が多く、同じ人のために何枚も申請書を作成すると、同じ内容を何度も繰り返し書くという無駄が生じます。アナログ作業による社労手続きは、あらゆる面で非効率なのです」と渡辺氏は語る。