“純国産鶏種”丹精國鶏(たんせいくにどり)

 扱う鶏肉は単に国内で生産されただけでなく、その種鶏まで国内で自給できなければならないと、生活クラブでは考えている。それは「種(たね)の自給」が、食の安全保障につながること、そして自分たちの食べるものが、その由来までたどれることで、ほんとうの意味での安心・安全が確保できるとの方針にもとづく。

 目を付けたのが、独立行政法人家畜改良センター兵庫牧場でつくり出された国産鶏種「はりま」だった。同牧場は、実際に食肉となる鶏から数えて三代前、曾祖父母にあたる原々種鶏(げんげんしゅけい)の系統を複数維持している。優れた形質をもつ系統を掛け合わせることによって、食味がよく、肉付きがよく、ヒナの生産性も高い(卵をたくさん産む)、はりまの親鳥(種鶏)をつくり出すことができる。種鶏や原種鶏を輸入せずとも、鶏肉を完全に国内でまかなうことが可能なのだ。

 しかし、はりまは海外産の鶏種に比べると、病気に弱いという欠点もあった。生活クラブは秋川牧園と協同して、無投薬によるはりまの飼育技術を確立させた。いま、この技術を導入して、秋川牧園を含む3社が、共通の飼育基準に従ってはりまの飼育をおこなっている。

 無投薬であるばかりか、遺伝子組み換え飼料や収穫後農薬を使用した飼料もいっさい与えない。飼料の国産化にも取り組み、地域農業の維持・活用にも一役買っている。さらに、より肉付きのよい、病気に強い系統をつくり出す取り組みもすすめる。原々種鶏を国内にもつことで、こうした品種改良も可能になるのである。

 こうしてつくられた“純国産鶏肉”は、「丹精國鶏(たんせいくにどり)」というブランド名で組合員の食卓に上る。やわらかく、それでいてほどよい歯ごたえがあり、噛むと旨みのある肉汁が口の中に広がる丹精國鶏は、生活クラブ組合員が、20年以上をかけて、取り組み続けてきた成果なのだ。

 ほかにも、卵、牛乳、豚肉、米などの基本食品や調味料、加工品など、生活クラブで扱う“消費材”のほとんどは、オリジナル品であり、組合員が安心・安全を求めて、生産者を探し出し、ともにつくり出してきたものばかりである。消費材の数だけ物語があるといっても過言ではない。さらに、食にとどまらず、福祉やエネルギーの分野にも、事業は広がってきた。それも、自分たちや地域社会にとって必要な事業を、組合員自身が立ち上げてきたのである。

 生活クラブの50年の歴史は、日本の社会に深く根づいた常識に挑み、非常識と言われたことを新しい常識に変えてきた歴史である。生活クラブの原則に、「自分たちで決めて、自分たちで実行する」という項目がある。組合員の思考と行動は、まさにそこに集約するといっていいだろう。生活クラブという組織は、ひとりのカリスマがつくりあげたのではない。“おおぜいのひとり”が、議論し学びあいながらつくりあげたものなのだ。

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