革命期に問われるリーダーの自己変革力

対談(後編) 経済同友会代表幹事・小林喜光氏×松江英夫氏

2045年に目指すべき社会像を起点とした、日本の社会・経済システムの変革構想「Japan 2.0」を提言してきた経済同友会代表幹事・小林喜光氏と、この「Japan 2.0」の議論にも加わったデロイト トーマツ インスティテュート代表(※)の松江英夫の対談。その後半では、自己変革を牽引すべきリーダー層へのメッセージを中心に活発な議論が続いた。

先と外を見ながら
変革をデザインする

小林喜光(こばやし・よしみつ)
経済同友会代表幹事、三菱ケミカルホールディングス会長。1971年東京大学大学院理学系研究科相関理化学修士課程修了。ヘブライ大学(イスラエル)物理化学科、ピサ大学(イタリア)化学科留学を経て、74年三菱化成工業(現・三菱ケミカル)に入社、2005年三菱化学常務執行役員、07年三菱ケミカルホールディングスと三菱化学の社長に就任。15年より現職。理学博士。著書多数。近著に『危機感なき茹でガエル日本-過去の延長線上に未来はない』(中央公論新社)

松江 小林さんは、「Japan 2.0 最適化社会の設計―モノからコト、そしてココロへ―」の中の経営者宣言で、経営者としての「自己変革」を掲げられました。

 私自身は、企業の自己変革について長年研究しており(『自己変革の経営戦略』)、組織を自ら変革するには、トップが「先」と「外」を見ることが大事だと考えています。小林さんの目には、日本の今の経営者はどのように映っているのでしょうか。

小林 経営者といってもいろいろな人がいますから一概には言えませんが、日本の場合はとりわけ大企業のリーダーが果たすべき役割が大きいと思います。国民は社会変革が起こっていることになかなか気付きませんから、リーダーが先頭に立って変えていくしかない。

 「先」を見るという意味では、今の時代はトップが先を見ながら変革していかなければ、会社は動きません。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われていた過去の時代は、日本は現場がしっかりしているからトップがゴルフをしていても、酒を飲んでいても、極端な話、戦略性がなくとも、会社はきちんと動いていた。

 残念ながら、その感覚がいまだに残っていて、今でも現場から上がってきたものや、今まであったものを、多少効率良くしたり、コストを安くしたりすることが経営だと思っているトップが多いようです。

 しかし、トップの本当の仕事は大きな構想を描き、システムをデザインして、組織を引っ張っていくことです。そこが分かっていないから、欧米の先進企業のトップに勝てない。

松江英夫(まつえ・ひでお)
デロイト トーマツ グループ CSO、デロイト トーマツ コンサルティング パートナー、デロイト トーマツ インスティテュート 代表。経済同友会幹事、中央大学ビジネススクール客員教授、事業構想大学院大学客員教授、フジテレビ 系「FNN Live News α」レギュラーコメンテーターなどを務める。

 先ほど、コンピュテーショナル・デザイン・シンキングの話をしましたけれど、自分の思想や哲学、ビジョンをしっかりと持ってコンセプトを設計し、事業をデザインする。そして、組織や社員の行動にそれを浸透させて、変革に導く。それこそが、経営であり、トップの仕事です。

松江 まさに、競争力の源泉はトップの「先」を見据えた構想力にあるということですね。「外」を見る、という観点ではいかがですか。

小林 「外を見る」の観点では、いまだに株主を見ていない経営者が多いですね。2015年にコーポレートガバナンス・コードが適用されるようになり、そういう意味では、変化しているのは分かりますけれども、もっとスピード感を持って変革を進めていく必要があります。

(※)Deloitte Tohmatsu Institute(DTI)は、デロイト トーマツ グループに集う多様なプロフェッショナルの知見をグループ全体で共有し、より高いレベルのインサイトやソリューションを継続的に創出・発信していくためのプラットフォームです。

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