革命期に問われるリーダーの自己変革力

対談(後編) 経済同友会代表幹事・小林喜光氏×松江英夫氏

リーダーは肚を据えて
変革を実行する

松江 私は常々、日本は、痛みを伴うことが苦手で、変革を完遂できないことに課題を感じています。それは、先ほど小林さんがおっしゃったように、日本人は今に満足していて、かつ、過去から築き上げた経済社会システムの完成度が高いことが背景にあると思います。何か新しいものを創ろうとすると、壊すか、もしくは形を変えるためにさまざまな痛みを伴うことが不可避です。これは何もないところに創るよりもよっぽど難しい。

 この痛みを伴うところを、どうやり抜くか、実行できるかどうかが、リーダーシップの最も大事なところだと思います。この辺はどのようにお考えでしょうか。

小林 最終的にはリーダーの肚だと思います。それぞれの場所のリーダーが本気で血を流してやろうと考えないで、ずるずると慣性の法則で変わらないまま、気が付いたらアウトというが一番の危惧です。

 例えば、マイナンバー制度やキャッシュレスといった大幅な社会システムの変更の場合、国民は得てしてコンサバティブです。行政や政府、とりわけ企業体でも特に大きな組織のリーダーが本気で肚を据えて変えていかないと、何も変わらないでしょう。

最後は“ヒューマニティー“に行き着く

松江 「Japan 2.0」を作る過程で私が最も印象的だったのは、小林さんが、「最後はヒューマニティー(人間らしさ)だ」と発言された場面でした。

小林 今は、過去2000年の歴史の中で最大と言っても過言でない、技術革新による革命期です。

 これまでの産業革命で蒸気機関や内燃機関、産業ロボット技術などが発展し、人は手足の機能を外部化してきました。今、起きている産業革命ではコンピューターやAIの飛躍的進歩で脳が外部化され、人間とAIがハイブリッド化した新たな人類が誕生してしまう可能性すらある。人間の内部のDNAを変換することまでも技術的には可能な時代になろうとしているのですから。

 いよいよ人間とは何なのか、人間とはどう生きるべきか、ということを考えなきゃいけない時代になったんですよ。そうなるとやっぱり最後に大事になってくるのは、人としての哲学であり、ヒューマニティーでしょうね。

松江 まさにそこが「Japan 2.0」の「モノからコト、そしてココロへ」の「ココロ(心)」に込められた意味ですね。

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