二つの動力を使って省エネルギーと環境負荷軽減を実現するハイブリッド技術は、自動車での利用がよく知られているが、実はオフィスビルのような建物の空調にも導入が始まっている。
東京ガスの次世代ハイブリッド空調システム「スマートマルチ×エネシンフォ」は、ガスと電気の“いいとこ取り“により、顧客価値の最大化を目指す商品だ。
「スマートマルチ」は、ガスヒートポンプ(GHP)と電気ヒートポンプ(EHP)を組み合わせ、ガスと電気のエネルギー消費量をコントロールし、ベストミックスを個別空調で実現するハイブリッド空調システム。東京ガスはなぜ、「スマートマルチ」を開発したのか。
エネルギーソリューション本部
都市エネルギー事業部 商品・サービス部
石野裕嗣部長
都市エネルギー事業部商品・サービス部の石野裕嗣部長は、2016年の電力の小売り全面自由化が背景にあると説明する。
「当社の商材は都市ガスです。お客さまに最適なガス空調システムを提供するため、ガスはもちろん、競争相手である電気空調システムについても得意不得意を研究してシステム開発をしてきました。ただこのときすでにGHP、EHPそれぞれ単体での更なる運転効率の引き上げは難しいという認識でした」
自由化により状況が変わった。他社との競争は激化したが、GHP、EHPの両方が扱えるようになったため、それらの長所を組み合わせた"いいとこ取り"のハイブリッド空調「スマートマルチ」を送り出すことができたのだ。
ベースとなる技術はすでに保有していたのでゼロからの開発ではなかったが、機器の制御を行うソフトウエアの開発には苦労したと、石野部長は振り返る。
「空調のハイブリッド制御は複雑です。外気温度が変わると機器の効率も変わります。また、エネルギーコスト最小化には、デマンド(最大需要電力)が影響してくるため、電力の使用状況をリアルタイムに把握していないと最適なコントロールができません。そのためハードの開発もさることながら、制御ソフトの開発が困難でした」