初の女性理事長が挑む
覚悟と信念の「監査イノベーション」

「アシュアランス(監査)4.0」
への非連続なイノベーション

──今後、監査法人にはどのような変革が求められていくのでしょうか。

 必要なのは、非連続なイノベーションです。職人の勘に頼っていた「アシュアランス1.0」、高リスク項目を重点的にチェックするリスクアプローチ型の「アシュアランス2.0」、コンピュータ活用によるデータ分析の「アシュアランス3.0」を経て、いま「アシュアランス4.0」への転換期を迎えています。

 そのカギとなるのは継続的監査(Continuous Audit)で、海外も含む全取引をリアルタイムで把握し、異常な取引や不正の兆候がないか、AIを活用してモニタリングしていく世界です。クライアントがAIやデジタルデータを用いたビジネスの再定義を迫られる中、監査にも革新が求められているのです。

 すでにEY新日本では、AIを監査に活用しています。また、それに不可欠なデジタル人材育成についても、約5500人の全メンバーを対象に取り組んでいます。

──テクノロジーの活用に伴い、会計士に対する期待も変化しています。

 経営者との対話をより深めるためにも、単なるデータ分析を超えたインサイトを示すことが重要です。そのためには、ビジネスに対する理解をいま以上に深めて、経営者が貴重な時間を割くにふさわしい「価値」を提供しなければなりません。

 もう一つは、異常値や不正の芽を「発見」するだけでなく、具体的にどうするのかという「解」を示すことです。プロとしてのジャッジが伴うので、いまのところAIにはできません。これは会計処理の適正性をめぐる判断も同様で、AIは答えが幾つもあったり、さまざまな要素が入り組んだ結果、予想外の結論が導かれたりする複雑な問題解決が苦手です。

 このようにテクノロジーで監査業務の労働集約的な性質が変われば、会計士に求められる能力や働き方も大きく変わる。経営者との関係も再設計されることになるでしょう。

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