クロスボーダー時代に
どう対応するか
──M&Aなどを通じて海外に成長機会を求める企業が増えました。クロスボーダー監査のためにどのような取り組みを行っていますか。
大きく3つあります。1つ目は、150以上の国と地域に26万人以上のメンバーを擁するEYのグローバルネットワークを最大限に活用することです。本年7月にEYのジャパンエリアはアジアパシフィックエリアに参画し、連携を強化します。今後は日本が地域最大の事業拠点として中核的な役割を担っていきます。クロスボーダーで最適なチームを編成したり、密なコミュニケーションを取ったりすることで、これまで以上にシームレスで高品質なサービスを日本のリーダーシップの下に提供できるようになります。
2つ目は、デジタルを活用したグループ監査の高度化です。世界共通の監査プラットフォームを用いて、日本の親会社の監査チームが海外子会社の監査資料にアクセスしたり、海外拠点の監査の進捗状況を確認することができます。われわれの監査業務の効率化はもちろんのこと、クライアントにとっても、海外子会社の管理強化に役立ちます。
3つ目は、マインドセット・チェンジの加速です。グローバルな視点で監査を行うために、英語力はもちろん、各国のEYと連携して、短期・長期、研修・駐在などさまざまな形で海外経験を積む機会を増やし、クライアントのグローバルでの成長に貢献できる人材を育成します。
──市場の番人として、社会の期待にどのように応えていきますか。
これまで会計士は、「監査の目的は企業が作成する財務諸表の適正性を保証することであり、不正の摘発ではない」という立場を取ってきました。しかし私は、「いまや不正の発見は監査の目的の一つに加わった」と考えています。コストにも時間にも限りがあるので全ては不可能ですが、少なくとも重大な不正は見逃さない。これはもう、われわれ監査法人に課せられた社会的な使命だと受け止めて、覚悟を持ってコミットしていきます。