メンバー全員の当事者意識が高まり、劇的に組織を成長させる方法を説いた、吉田行宏氏の著書『全員経営者マインドセット』。この刊行記念イベントがダイヤモンド社セミナールームで2019年5月30日に開催された。プログラムは2部構成で、第1部は吉田氏の講演、第2部が対談「吉田行宏氏×岩佐文夫氏(前DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長)」。当日は多くの経営者らが参加し、吉田氏が「人が育ち、組織が強くなる原理原則」について語った。
アイランドクレア代表取締役
講演は、吉田行宏氏の自己紹介から。前職は自動車売買大手のガリバーインターナショナル(現IDOM)専務取締役で、創業メンバーの一人としてガリバーを全国展開させ、設立4年で株式公開に導いた。そして、創業10年以内に売上高1000億円(10億ドル)を達成、マイクロソフトやグーグルなどと並ぶ、世界でも数少ない「ハイパーグロースカンパニー(超成長企業)」となった。
「企業の成長に不可欠な4要素は、『ミッション・ビジョン』『戦略力』『組織力』『市場創造力』です。『戦略力』『組織力』は両輪で、どんなに立派な戦略を作っても、それを実行する組織力が弱くては話になりません。ガリバー在任中は組織力の強化は当たり前のことでしたが、外に出て組織力を軽視している企業の多さに驚きました。特にベンチャーは、組織力の重要性を認識していないケースをよく見掛けます」
現在、吉田氏は25社を超える企業の役員・戦略顧問などを務めるほか、出資支援も行っている。ガリバー時代に培ったノウハウとこうした企業支援の実体験を基に書いたのが『全員経営者マインドセット』だ。
成長の基になる「アイスバーグ」と
成長を阻害する「悩みブレーキ」とは
吉田氏はまず、組織力を強化するために必要な「個人の成長」について、ポイントとなる「アイスバーグ」と「悩みブレーキ」を取り上げた。
「アイスバーグとは氷山のこと。結果は氷山の一角です。それを生み出すためには、意識・想い・人生哲学、ふるまい・習慣・行動、能力・スキルが必要ですが、皆さん、能力・スキルばかりを重視していないでしょうか。あのイチロー選手が偉大な成績を残せたのは、能力もさることながら、野球に対する想いや人生哲学、それを体現したふるまい・習慣・行動があったからです。成長とは、アイスバーグを大きくすること。ですから、それぞれの要素をバランスよく大きくしていくことが大切です」
この成長を阻害する要因が「悩みブレーキ」と吉田氏は指摘する。
悩みブレーキとは、「この仕事は本当に自分に合っているだろうか……」「きちんと評価されているのかな……」といった心のモヤモヤが無意識のうちに行動にブレーキをかけてしまうこと。誰しもブレーキを踏んでしまいがちだが、それが自分の心の中にあることに気付き、「踏まない覚悟」をすることが重要だという。
成長する人とは「ブレーキを踏まず、アクセル全開で進み続けられる人。そして、アイスバーグが大きくなっていく人」なのだ。そのために何をすればいいかは、吉田氏の前著『成長マインドセット』を一読してほしい。