工夫できる余地を残した指示で成長を促す

岩佐文夫(いわさ・ふみお)
フリーランス/編集者。元DAIMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長。岩佐文夫(いわさ・ふみお)
フリーランス/編集者。前DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長。

 第2部の対談は、岩佐文夫氏(前DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集長)が吉田氏に質問する形で進行。「若手を育てる指導法」について吉田氏は次のように語った。

「指示の仕方が重要です。例えば、備品がなくなったら発注しておいて、という指示の出し方ではやる気は起きません。でも、備品がなくなったら常に新しく補充されるシステムを考えるプロジェクトのリーダーをやって、と言えばどうでしょう。がぜんやる気が出てきますよね。このように社員が工夫できる余地をたくさん残す指示を出すと、成長機会を与えることができます」

 権限・責任・情報を可能な限り与えることも大切という。「その人の能力ぎりぎりか、少し上の仕事を任せます。その立場になったからこそ、分かること、考えられることがあり、視野が大きくなってマインドセットも上がります」。

 吉田氏は、自社の会議でも社員の育成を心掛けているそうだ。「最初から私が結論を述べるのではなく、成長を促すために余白を残し、問い掛けをしたりして考えさせる時間を取っています。効率は悪いですが、人の成長と組織力を上げるには1~2年かかるため、辛抱強く続けることが大切です」。

副業はマインドセットにどう影響する?

 質疑応答では、「副業を認めるかどうかについて、マインドセットの観点からどのような見解を持っているか」という質問が出た。

「副業に関しては今、多くの企業から相談があります。マインドセットが高い人が副業をやるなら、新しいスキルの習得や視点の向上につながる良い経験になるでしょう。しかし、マインドセットが低い人だと、どちらも不完全でお金以外で本人のためにも、両社への貢献にも大きな疑問があります。なので、私としてはウェルカムではありません。ただ、副業を認めるかどうかは企業の組織、人財ポリシーに関わる問題なので、戦略的に判断していただきたいですね。ただし、社長一人で決めるのは要注意、どちらに決めても後で不満が出る可能性が高いです。ですから、経営幹部で、会社のミッションやポリシー、戦略を踏まえて弁証法を活用してしっかり腹落ちする議論をした上で決定することをお勧めします」

セミナー最後の質疑応答では参加者から現場のマネジメントに関する質問が多く出た。セミナー最後の質疑応答では参加者から現場のマネジメントに関する質問が多く出た。

 最後に、吉田氏は次のようにあいさつし、セミナーを締めくくった。

「私の好きな言葉の一つは『結果は選択できないが、行動は選択できる』というもの。ガリバー時代、修羅場の連続でしたが、そこで感じたのは、未来の結果は選択できないということでした。今日の講演も、アンケートでつまらなかったと書かれるかもしれませんが(笑)、それでも精いっぱいお役に立てるように100%頑張ろうと決めて来ました。これがマインドセット100%ということ。自分がどう行動するかは選択することができます。リーダーの器以上に企業、組織は大きくなりません。逆に言えば、皆さんの器を大きくすることで、まだまだ社員も企業も成長させることができるということ。ぜひ一緒に頑張っていきましょう」


全員経営者マインドセット

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―MSマトリクスで実現する次世代組織―
第1章 自社の組織は強い? 弱い?
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