人口減少から避けられない労働力不足。その解消を目的として政府が打ち出した「働き方改革」は、企業にとって人材不足の特効薬とは言えず、働き手にとっても現状では目に見えた改善があるわけではない。実は、国の方針とは別のところで企業、働き手の両者がお互いにプラスとなる仕組みがすでに実現しているのをご存じだろうか。そのマッチングの担い手に取材を行い、実践されている「本当の意味での働き方改革」の中身を探った。
優秀な人材ほど「個」で動く時代に
副業、複業、兼業など、さまざまな労働の形が『働き方改革』の名のもとに認められるようになってから久しい。日本経済新聞社が東証1部上場企業などの大手を中心にアンケートを実施したところでは、約5割の企業が副業を認めていることがわかっている。昨今では大手都市銀行のみずほフィナンシャルグループが、従業員の副業・兼業という、いわゆるダブルワークを認めるようになったのも記憶に新しい。終身雇用制度がすでに有名無実化している今、働く男女が安定した暮らしを守るうえで、本業以外の収入は確保しておくことに越したことはないだろう。
(出典:フリーランス実態調査2018) 拡大画像表示
実際に、フリーランスとして働く人の割合は年々増えている。ランサーズ株式会社が実施した「フリーランス実態調査2018」によると、日本における副業や兼業を含む広義のフリーランスの数は、過去5年間で19%の増加をみせている。これは約1,100万人が、どこか1つの会社に雇われる以外の働き方で収入をあげていることを示している。そして、このうちの約70%が「すきま時間を活用した“すきまワーカー”」や「2社以上と契約する“複業系パラレルワーカー”」などの複業フリーランスだ。
現在、日本の労働人口は6,600万人。しかしながら、30年後には少子高齢化の影響で4,400万人まで減少するという予想がある。いい人材を確保し、高スキル人材を活用したい経営者にとって、優秀なフリーランスの登用は必然となっていくことだろう。働く人にとっても、人材を雇う会社にとっても、いまや令和は大副業時代にあるといえる。
求められる「大企業が人材を登用しやすい」仕組み
前述の実態調査を実施したランサーズは、個人事業主や副業者などが仕事を請け負うためのフリーランスプラットフォームのリーディングカンパニーとして、これまで世の中へ『働き方の多様化』を促進してきた。テレワーク、シェアリングエコノミー、時間や場所にとらわれない自由な働き方など、感度の高い人であれば一度は耳にした言葉も多いことだろう。どこの企業も皆、高スキル人材の登用には興味がある。
しかしながら、実際にフリーランスを現場登用するハードルは未だに高いのも事実だ。正社員だけが活用可能な人材であるという、いわば「正社員神話」はまだまだ根強く残っている。それはフリーランス人材の適切な管理や評価、支払い関連、情報セキュリティまで、付随する課題が多くあるからだろう。
この問題にも、同社では積極的な取り組みを行っている。たとえば、発注を専任ディレクターに一括委託できる「ランサーズアウトソーシング」では、フリーランスの扱いに長けた自社プランナー・ディレクターが企業との間を折衝する。他にも法人向け社外人材の活用・一元管理を代理で行う「ランサーズエンタープライズ」など、大手企業が同社と契約を経由することで、気軽に社外人材を現場登用できる仕組みを生み出した。