議論のきっかけを意図した「逆さ全面広告」
このように業界のトップランナーとして確固たる地位を築いているランサーズだが、ここにきてマスメディアへの積極的なプロモーションを推し進めている。
日本経済新聞に出稿した全面広告「#採用やめよう」
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6月1日、全文を上下逆さにレイアウトした日本経済新聞全面広告「#採用やめよう」が賛否入り混じった大きな話題を呼んだ。その熱が冷めやらぬ6月21日には、田辺誠一を起用したテレビCMが開始、これまでにない大規模な展開で一般層への認知拡大を図っている。その意図は何なのか。
ランサーズの秋好陽介社長は「それぞれの広告施策にはそれぞれの意味がある」と語る。
「『#採用やめよう』は、正社員前提という従来型の働き方を見直すきっかけを作りたかったのです。新卒採用の解禁日である6月1日に新聞広告を掲載したのも、議論を呼ぶきっかけになればいいと考えたからです。掲載後は反響も高く、賛否を含めてさまざまな意見が活発に交わされるようになりました」
ランサーズ株式会社 代表取締役社長 CEO
1981年大阪府生まれ。2005年、ニフティ株式会社 新卒入社。2008年、「ランサーズ株式会社(設立時株式会社リート)」を創業。テクノロジーで個のエンパワーメントを実現する「オープン・タレント・プラットフォーム」の推進を掲げ、副業・フリーランス向けマッチングサービスや企業のスマート経営を推進する人材サービスを展開。
『満員電車にサヨナラする方法~時間と場所にとらわれない新しい働き方~』(著)
『超集中ハック! 習慣マニアの経営者が実践する100のライフハック』(著)
(一社)熱意ある地方創生ベンチャー連合 共同代表理事
「一方で、テレビCMは我々の抱える優秀な「ランサー」たちを企業に知ってほしい、またフリーランスでの働き方を模索したり、副業を真剣に考え始めた人たちに当社のしくみを知ってほしい、そういう思いが込められています。
この時代に『フリーランス』という言葉を聞いたことのない経営者はいないでしょう。誰しもがその有用性に気付いています。ですが実際は、自社では前例がないので活用できないというのが現状でしょう。そこで、あえてテレビCMでは高スキル人材のランサーを時間単価と共に紹介することで、「これなら自社でも登用できるかもしれない」と思ってもらいたかったんです」
すでに触れた通り、ランサーズでは企業と個人のマッチングをスムーズに行うための様々な仕組みを用意しているが、採用企業が増えれば増えるほど、そのオーダーも多岐にわたることになる。いまはまだフリーランスでは請けづらいと考えられているような職種のスペシャリストが大きなニーズを生む可能性も秘めている。反対に、登録者の彩りが広がれば広がるほど、企業側への提案もよりクリティカルなものになる。「働き方」、ひいては社会を変えるという同社の取り組みに関して、今回のプロモーション施策は必然であったと言えよう。
先進企業が取り組むフリーランスとの協業
実は、すでにランサーズを介した企業のフリーランス登用は私たちが想像するよりもずっと進んでいる。それも、マンパワーの補充とは一線を画したスペシャリストと企業の幸せなマッチングが実現しているのだ。
株式会社新生銀行では、銀行業界に先駆けて、商品開発に関する情報収集をランサーズ経由で実施。他にもフリーランス向けクレジットカード『FreCa(フリカ)』のデザインをランサーズで募集し、現在では実際のカード面として採用されている。同行は、外部への業務委託については厳格な管理が求められる金融機関であるため、犯罪収益移転防止法に基づく発注相手の本人確認というハードルがあったが、フリーランスの正確な本人確認情報が保管されているランサーズ内で公募を実施。外部委託のポリシーをクリアして、発注を進めることができた。
また、キンコーズ・ジャパン株式会社では、高いスキルを持ったクリエイターやデザイナーのタレントプールを目的に、前述した社外人材管理サービス『ランサーズエンタープライズ』の活用を開始。100万人を超えるランサーズの登録フリーランサーの中から、あらかじめ設けた「自社基準」をクリアした人材のみを集め、データベース上での一元管理を予定している。各個人とのNDA(秘密契約保持)や業務委託契約等は同サービスが代理で行ってくれるからこそ、大企業でもフリーランス人材を現場導入が可能になるという事例になりそうだ。