海外では当たり前のように普及しているキャッシュレス決済だが、日本の普及率は2割弱にとどまる。ネックとなっているのは店舗への導入コストと手数料の高さだ。また、決済サービス事業者が乱立して店舗でのオペレーションが複雑になっていることも影響している。そんな悩みを解決してくれるのが日本美食のマルチ決済サービス「TakeMe Pay」だ。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてインバウンド消費が盛り上がる中、飲食店や小売店にとって必須なのがスマートフォンによるキャッシュレス決済の導入だ。しかし日本では決済サービスが乱立し、どれを選べばいいのか悩んでいる事業者が多い。そんな事業者にとって強い味方となるのが、国内外の20種類の決済サービスをひとまとめにしたマルチ決済サービス「TakeMe Pay」を提供する日本美食だ。
同社の董路(ドンルー)社長は2015年の立ち上げ当時から、日本でのキャッシュレス決済の普及とビジネスの将来性を確信していたという。それは董社長のユニークな経歴と深い関わりがある。
中国・北京生まれの董社長が初めて来日したのは1993年のこと。日本の大学を卒業後、日本で外資系金融機関に就職し、10年を日本で過ごした。その後米国留学を経て北京で起業、ECビジネスを手掛ける。そして14年に再来日し15年に訪日外国人向けの飲食店案内・予約・事前決済サービス「日本美食」を設立した。
日本の実情をよく理解していながら、日本を訪れる外国人の気持ちもよく分かる。「だから双方が抱えている悩みがよく理解できました」(董社長)。
日本を訪れる外国人の悩みは大きく3点ある。①美味しい飲食店を探せない、②言葉が通じないので予約やメニューの注文が難しい、③スマホでのキャッシュレス決済ができない。対する受け入れ側の日本の飲食店も、①外食人口が減少する中で新規客を集客できない、②インバウンドの予約客による無断キャンセル、③スマホ決済に対応していないため機会損失が発生する、という3つの悩みを抱えていた。
この悩みを解消できれば必ずビジネスになる──。そう確信した董社長は、①海外のメディアと連携して厳選した飲食店を紹介、②来日前に予約と事前決済ができるアプリの開発、③QRコードの読み取りで世界20種類の決済サービスを利用できるマルチ決済、というソリューションを提供。すると徐々にインバウンド客が増えて売り上げも増加し、成功体験が積み重なっていった。
そこに追い風が吹く。スマホのキャッシュレス決済サービスに新規参入が相次ぎ、各社がポイント還元などの大々的なキャンペーンを展開したことで、スマホ決済に対する消費者の認知度が一気に高まった。