市場ニーズもあった日本初のロボット掃除機構想
実は武正教授は、かつて日本電気(NEC)のアドバンス・デザイン部に所属し、1989年に次世代商品としてロボット掃除機のモックアップ(実物大模型)を制作していた。
「充電式のロボット掃除機で、実際にホームエレクトロニクスの展示会にも出展し、各方面から注目されました。当時はまだ技術が十分でなく、実用化には至りませんでしたが、ロボット掃除機の発想自体は、その頃からあり、市場ニーズもあったのです」
14年後の2003年、日本にロボット掃除機「ルンバ」が登場した際は、「やっと出たか」という思いだったという。
“モノからコトへ”の家電の流れの先端にあるロボット掃除機
かつて「冷蔵庫」「洗濯機」「白黒テレビ」が“三種の神器”と呼ばれたころ、家電は生活の利便性を向上する道具であると同時に、所有欲を満たすものとして存在した。例えばテレビは、まるで家具のようなキャビネット型の重厚なものが人気だった。
それが、2000年代に入ると、商品そのものより、それを使って何をするか、何ができるかに重きが置かれるようになってきた。いわゆる、モノからコトへの転換である。
「そして、時代が進むにつれ、家電のデザインは“壁化”“身近化”してきました。壁化というのは、壁に溶け込むように見えなくなること、身近化というのはウエアラブル。家電は今、機能性を追求してよりシンプルなデザインになり、存在感を消す方向に進んでいます。それを考えると、人の手を離れ、見えない所で部屋をキレイにしてくれる『ルンバ』は、“モノからコトへ”という家電デザインの流れの先端にあると思います」
その「ルンバ」を開発したアイロボット社が、今年7月26日に、床拭きロボット「ブラーバ ジェット®m6」を新たに生み出し、注目を集めている。
特に小さな子どもがいる家庭の場合、汗やよだれ、皮脂汚れや食べこぼしなどを“拭き掃除”してくれる機能は重宝するだろう。タイルやフローリングなど、床拭きできる床材ならどこでも使うことができ、近年、フローリング仕様が多くなった日本の住居に、よりマッチした機能といえる。
最新の「ルンバ i7+」のナビゲーションテクノロジーを搭載することで、家じゅう隅々まで清掃可能になった。掃除機では取り切れない皮脂などのベタベタ汚れを、ジェットスプレーが浮き上がらせて、専用パッドで拭き取ると、床のキレイさが格段にレベルアップする。また、水拭きだけでなく、から拭きモードもあり、汚れに合わせて選べる。