市場のニーズを「化学」に翻訳し
顧客体験価値を最大化

事業間の壁を取り払った
自動車複合材プロジェクト

 昭和電工には14の事業と幅広い技術があるが、個別事業ではプロダクトアウトの目線にとらわれ、それだけでは変化する市場の要求には対応できない。そこで同社が新たに取り組んでいるのが、全社横断的なマーケティング組織の整備と事業間連携の強化だ。

「お客さまの期待以上のソリューションを提供するためには、縦割りのタコツボ組織では対応できません。積極的に組織の間に風穴を開けて情報の流通量を増やすことが重要になってきています」

 この新たな取り組みの第一弾として走りだしているのが「自動車複合材プロジェクト」だ。自動車業界には今、CASEというメガトレンドがある(下図参照)。しかし現時点ではまだ混沌としており、どんな製品・サービスが選ばれるのか、誰も解を持っていない。ただ個別に見ていくと、電動化や軽量化、通信との融合といったトレンドははっきりしており、多様な事業ポートフォリオを持つ素材メーカーの昭和電工は、そこに勝機を見いだそうとしている。

「当社には自動車材料に適した素材が幾つもあります。しかしそれらを組み合わせて、より機能の高い部材やモジュールを提供することは簡単ではありません。そこで自動車業界に関連する事業部、R&D部門から、経験のある人材を横断的に集め、マーケティング機能を有する自動車複合材プロジェクトを発足させました」

 同社の森川宏平社長が日ごろからよく口にする言葉がある。「われわれに求められているのはお客さまの抽象的・感覚的なニーズを『化学』に翻訳する能力だ」。

 自動車複合材プロジェクトでも、抽象的な顧客の要望を、いかにして「化学」や「素材」の言葉に翻訳し、開発する製品のスペックに落とし込むのか、そして顧客の想像以上のソリューションを提供できるのかが重要になる。カスタマーエクスペリエンスの視点が鍵となるのだ。

*2019年7月、ノンスティック・コーティング剤事業を手がける「コーティング材料部」を新設して、14の事業となった。
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