2011年10月から全6回にわたって連載した「可視経営塾」は多くの人の関心を集め、読者限定で開催した業務プロセス可視化法(以下HIT法)講座には定員を上回る参加者が集まった。連載のメインターゲットは経営者だったが、意外にも高い関心を寄せてくれたのが、部長・課長クラスの管理職だ。そこで今回の連載では、管理職がどのようにHIT法を使って業務プロセス革新を進めていけばいいのか、そのポイントを3回にわたってお伝えしていく。

悩める管理職がHIT法に高い関心

石橋博史                    株式会社システム科学              代表取締役社長  1962年から24年間、自動車機器メーカーに勤務し、教育担当、人事、、総務、工場長、社長室の職務を歴任。1986年、システム科学を設立。業務革新の実践および「HIT法」の開発・導入、2010年2月に「業務プロセスの可視化法とチャート作成システム」で特許取得。主な著書は、「業務革新の実践手法」(ダイヤモンド社)、「可視経営 仕事がみえれば会社は変わる」(日経BP企画)「意識・行動が変わる続・可視経営」(日経BPコンサルティング)。

 前回の「可視経営塾」の連載では大反響をいただき、連載に合わせて開催した業務プロセス可視化法についての講座には毎回たくさんの人にお越しいただいた。連載では、主に企業経営者に向けてメッセージを送ったつもりだが、経営者だけでなく、課長クラスにも共感してくれる人がいた。急きょ、管理職向けの1日体験講座を用意したほどだ。講座を実施するなかで気づいたのは、管理職の意識の高さだ。

 講座には自費で来たという人も少なからずいて、意欲ある人が非常に多かった。ただ、彼らは一様に迷っているような顔つきをしていた。「現状のままでいいのかわからない」「ただ忙しく仕事をしているだけで毎日が過ぎていく」と悩みを口に出す人もいた。経済が低迷し、企業業績も悪化しているなか、自分の将来に不安を抱くのも無理はない。そんな不安を解消するためには、どの企業にいっても通用するような確固たるスキルを身につける必要があるだろう。 

 では、管理職にはどのような問題があり、どのようなスキルを身につけるべきなのだろうか。

■プレイングマネジャーの問題点

  日本企業の管理職の問題点は、“マネジャー”ではなく“プレイングマネジャー”になってしまっていることだ。彼らは、マネジメント技術を持っているからマネジャーになったのではない。ルーチン業務が優秀だからマネジャーになったのだ。だからマネジャーといっても、具体的に何をどうマネジメントしていいのか、実はわかっていない。そのことを講座に参加した管理職に指摘すると、皆頷いていた。