野村不動産は今年11月、従業員10人未満の企業に向けて、新ブランドであるサービス付小規模オフィス「H1O(エイチワンオー)」の提供を開始した。そのコンセプトは、働く人の気持ちに作用し、「個」のポテンシャル(生産性や付加価値を生む力)を最大化する“ヒューマン・ファースト”。「H1O」誕生の経緯とオフィスの特長、今後の供給計画などについて、同事業を推進する宇木素実同社執行役員に聞いた。

 東京都中央区日本橋室町にある野村不動産の「PMO(プレミアム・ミッドサイズ・オフィス)」の3階に、11月1日にオープンした「H1O日本橋室町」がある。

 エレベーターホールを出ると、グレード感の高いエントランスがあり、有人レセプションサービスのスタッフが控えている。内部に入ると広い共用ラウンジ。木目調の壁と落ち着いたカーペット、デザイン性の高い家具がリラックスした雰囲気を演出している。

エレベーターを降りると目の前がエントランス。ビル入口にセキュリティーがあるため関係者以外は立ち入ることができないシステムとなっている
エレベーターを降りると目の前がエントランス。ビル入口にセキュリティーがあるため関係者以外は立ち入ることができないシステムとなっている

 ラウンジの周囲には、目的別に設計された会議室があり、その奥にプライバシーが保たれた個別のオフィススペースが広がる。仕事に集中できそうな心地良い空間だ。

「もっと小スペースの快適なオフィスが欲しい」
という顧客の要望から誕生

野村不動産
宇木素実 執行役員
野村不動産 都市開発事業本部 
ビルディング事業一部・二部担当
宇木素実(うき もとみ) 執行役員

「きっかけは、弊社のPMOを運営していく中で、『もっと小さなPMOはないのか』『PMOを分割利用することはできないのか』などといったお問い合わせが増えてきたことです。PMOに入居するには会社としての規模が小さく、適度なスペースのオフィスを探すと、不特定多数の出入りが多くセキュリティーに不安のあるコワーキングオフィスか、見栄えが良くない雑居ビルやマンションの一室になってしまう。“もっと小さなスペースで、かつ快適なオフィスが欲しい”というお客さまの要望を背景に、小規模企業向けのオフィス開発を始めたのです」

 そう語るのは、「H1O」事業を推進する宇木素実執行役員である。

 今従業員10人未満の小規模企業は、全国に30万社以上あり、全企業の8割を占めているという。だが、ベンチャー企業など成長の初期段階にある小規模企業が、大規模オフィスのような快適かつセキュアな環境で仕事ができるオフィスは、限りなく少ないのが現状だ。

 昨今の働き方改革によって、一人ひとりの労働時間が圧縮される一方で、個々人の生産性を高め人材不足を解消することが社会的に急務となっているものの、資本力のある大企業に比べて中小企業や小規模事業者の生産性は低下傾向にあるというのも、オフィス環境によるところが大きいのではないだろうか。

 もともと野村不動産では、10年以上前から都心部でPMOの開発を進めてきた。広さは1フロアで約50~200坪、従業員数15〜50人がターゲットのスタイリッシュなオフィスで、現在30棟以上の規模に拡大している。「H1O」はそのPMOの運営の中で見えてきた顧客ニーズと、現在の日本の企業を取り巻くオフィス環境の課題を出発点として、考案されたのである。

「H1O」のコンセプトは、野村不動産のオフィス運営全体の思想でもある“ヒューマン・ファースト”。目指しているのは、働く人の気持ちに作用して、生産性や付加価値を生む力、「個」のポテンシャルを最大化できる環境をつくることだ。言葉を換えれば、利用する人が心地良さを感じ、自分らしさや豊かな感性を発揮できる環境、「一言で言えば、働く人が幸せに生きる“Well-Being”な環境です」(宇木執行役員)。

共有エリアには広々としたソファやテーブル、窓際にもカウンターテーブルが設けられている
共有エリアには広々としたソファやテーブル、窓際にもカウンターテーブルが設けられている

 これまでオフィスビルは、どちらかというと働き手よりも、作り手や管理する側の都合で造られていた。その土地で効率よく運営できる物件、多くのデスクを詰め込みやすい部屋など。“ヒューマン・ファースト”とは、その考え方とはまったく異なる発想である。いかに個のパフォーマンスを向上させられるか。企業単位に留まらず、そこで働くヒト単位で顧客ニーズを捉え、個人が自分らしくイキイキと働くことができるオフィス環境をつくり上げているのだ。