ゴキブリがいなかったら
熱帯の森は消滅する

 丸山宗利・九州大学准教授との出会いは、2018年国立科学博物館で開催された特別展「昆虫」だった。そこに「Gの部屋」というゴキブリの展示があり、ゴキブリの役割について温かいまなざしで解説する丸山准教授の文章に岡部社長は感銘を受け、両者の交流が始まった。

「本来、大部分のゴキブリは森林にすみ、人間とは関わりのない生活を送っています。朽ち木や落ち葉を食べて土に戻すものも多く、特に熱帯の森林生態系においては重要な役割を持っています。もしもゴキブリがいなかったら、森は倒木にあふれ、落ち葉はうず高く積もり、生物多様性にあふれた熱帯の森はなくなってしまうでしょう」

 丸山准教授はそう説明する。

 丸山准教授の研究テーマは、「アリと昆虫との共生」である。アリの巣には実はさまざまな昆虫がいて、普段は共存・共生しているが、バランスが崩れると紛争が起こり、捕食が起きたりする。他の巣から幼虫を奪い取ってきて奴隷にしたり、キノコを栽培して農耕をするアリがいるなど、その世界は人間界の縮図なのだという。そこから学べるのは、人間もまた自然界の一部の生き物にすぎないということ。決して生態系ピラミッドの頂点に君臨しているわけではないのだ。

 8thCALの事業内容は、環境コンサルテーション・啓発・研修・商品開発である。その商品開発の分野で、今取り組んでいるのが「トコジラミ」(南京虫)の抑制だ。同社ではトコジラミによる被害を最小限に抑えるため、「e-Learning Systemの導入→背面キャッチ・誘引トラップ→忌避・結界テープ→駆除施工と効果判定」というパッケージ商品を開発、早期発見の仕組みを提案している。

トコジラミの吸血被害は生活の質を損なう

生き物との共存・共生で環境を創る 未来を創る日本ペストコントロール協会
平尾素一名誉会長(農学博士)

 睡眠中の人を吸血するトコジラミの被害が2010年ころから日本の都市部でも急増しています。ホテルなどの宿泊施設からマンション、アパートなど一般世帯にまで広がり始めているのです。吸血されるとその個所はひどくかゆいのですが、現在のところ蚊のような感染症の報告はありません。しかし生活の質(Quality of Life)が著しく損なわれることから、欧米をはじめとする海外では大問題となっています。

 この虫は隣接する家庭にも広がりますが、「近所に知れたら困るから」と、被害を隠すという日本人独特の感性が、被害をさらに拡散しています。外部から持ち込まれ、近所に拡散するもので、決して汚い家庭から発生するものではないのです。正しくトコジラミを知って、正しい防除法をぜひ採用してもらいたいと思っています。